
コロナ禍でのパソコンやタブレット端末の需要増加、自動車業界の盛り上がり、5Gへの対応…半導体は、今世界的に起きているこうした変化すべてに欠かせないものです。半導体の需要増加に伴い、製造装置には生産性向上が求められています。今回は半導体不足の要因から、今後の半導体・製造装置の市場動向、製造装置の性能向上ソリューションまで解説していきましょう。
なぜ?世界的半導体不足の主な原因とは
世界的に深刻化する半導体不足。その要因として特に指摘されているのは、「リモートワークや巣ごもりによるパソコン等用途の需要増加」「自動車売上の急回復(新車需要の高まり)」「米国による対中制裁」の3つです。
また、コロナ禍における需要増加だけではなく、2020年3月にサービスを開始し本格的に普及し始めている「5G」、自動車業界のEV(電気自動車)シフトや「CASE」と呼ばれる技術トレンド、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)などにおいても、半導体は欠かせない存在です。こうした分野の盛り上がりがコロナ禍での需要増加とあいまって、半導体不足が深刻化しているとされています。
半導体・半導体製造装置の需要予測―高い成長の見込み
しかし、これらの変化は半導体市場にとってはプラス要因です。今後、半導体市場はどのように変化していくのでしょうか。
2021年6月8日に世界半導体市場統計(WSTS)が発表した春季市場予測∗によると、2020年の世界半導体市場は前年比6.6%増でしたが、2021年の成長率は19.7%増と大幅に加速が見込まれるとしています。その中でもメモリーは2021年31.7%増、2022年17.4%増と高い成長が予想されています。さらに2022年は全体で8.8%増と成長が継続し、2年連続で最高記録を更新する見込みと予測しています。
また、同予測の中で、日本の半導体市場動向は、2020年は前年比0.6%減でしたが、2021年は11.8%増、2022年には5.4%とプラス成長が予測されています。
∗出典:WSTS日本協議会,「WSTS 2021年春季半導体市場予測について」,<https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20210608WSTS.pdf>(最終閲覧日:2021年8月16日)
半導体の需要増加に伴い、半導体製造装置の需要も高まっています。2021年7月1日に日本半導体製造装置協会(SEAJ)が発表した、2023年度までの半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の需要予測∗によると、2021年度の日本製装置販売高は、前年度比22.5%増の2兆9,200億円。2022年は5.1%増の3兆700億円、2023年度も4.9%増の3兆2,200億円と、右肩上がりの成長の見込み。「機器の実需が素直に牽引してゆく形で、半導体製造装置は高水準の成長が続くとみている」としています。
∗出典:一般社団法人日本半導体製造装置協会,「2021年7月発表 半導体・FPD 製造装置 需要予測 (2021年度~2023年度)」,<https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20210608WSTS.pdf>(最終閲覧日:2021年8月16日)
世界的に半導体の需要が急速に高まる中、さらなる生産量増強のため、半導体製造装置には「生産性向上(スループット向上)」と「位置制御の高精度化」が求められていきます。この工程を簡略化し、装置の付加価値を向上するソリューションとして安川電機が提案するのが、最新ACサーボドライブ「Σ-Ⅹ(シグマ・テン)」です。
次章では、装置の生産性向上と位置決めの高精度化を実現するΣ-Ⅹの性能を紹介します。
半導体製造装置の生産性向上と高精度化を実現するΣ-Ⅹの3つの性能
ACサーボモータΣ-Ⅹは、半導体製造装置に求められる「生産性向上(スループット向上)」と「高精度化」に欠かせない基本性能を、業界最高レベルに向上させています。その中でも、装置のスピードアップに重要な「モータ回転速度」「速度周波数応答」、製造の品質や精度を左右する「エンコーダ分解能」について紹介します。
①スピードアップ・スループット向上:業界最高クラスのモータ回転速度
まずは装置のスピードアップに大きく影響する、モータの回転速度です。Σ-Ⅹは、モータの最高回転速度が従来の「6000min-1」から「7000min-1」にアップしました。サーボモータ自体の最高回転速度の向上により、位置決め時間を短縮でき、半導体製造装置の生産性向上に貢献します。
②スピードアップ・スループット向上:世界最高レベルの速度周波数応答
また、速度指令に対するモータの応答性を示す速度周波数応答も向上しています。速度周波数応答は、サーボドライブの制御性能の高さを示す重要な評価指数で、数値が高いほど高速制御が可能になります。
Σ-Ⅹの速度周波数応答は、従来製品の3.1kHzから世界最高レベルの3.5kHzにアップしました。速度指令に対する追従性が上がることで、装置の生産性が向上します。
③位置制御の高精度化:従来比4倍のエンコーダ分解能でピタッと止まる
また、生産性や装置の付加価値向上のためには、速度アップと同時に、速度のムラを低減し、位置決め・停止の制御精度を上げることも必要です。より高い位置決め精度実現のため、サーボモータはエンコーダを搭載しています。このエンコーダの目盛りの細かさが位置決めの精度に大きく影響します。
Σ-Ⅹは、エンコーダ分解能26bit≒6700万パルス/revにアップし、従来比4倍の細かさで位置決めが可能になります。
Σ-Ⅹはこうした基本性能を向上したことにより、半導体製造装置の生産性向上(スループット向上)と位置制御の高精度化を実現します。また、Σ-Ⅹは従来製品から簡単に置き換えられるため、装置の開発・設計工数を削減できることもポイントです。
最新サーボドライブΣ-Ⅹによる半導体製造装置向けソリューションについてさらに詳しく知りたい方は、お問い合わせページからぜひお気軽にご相談ください。

解説のポイント
- 世界的な半導体不足の主な要因は「リモートワークや巣ごもりによるパソコン等用途の需要増加」「自動車売上の急回復」「米国による対中制裁」といわれている。
- 半導体・半導体製造装置の今後の市場予測はプラス成長。半導体の需要増加に伴い、製造装置は生産量増加が求められている。
- 安川電機の最新サーボドライブΣ-Ⅹは、装置のスピードアップ・スループット向上、位置制御を高精度化する性能を備え、装置の生産性向上に貢献する。