近年、半導体は自動運転やIoT、医療など新たな分野での需要が急速に高まり、製造現場では生産増強が急がれていますね。今回は、半導体製造の生産性を向上させるソリューションを解説しましょう。
世界半導体市場、初の4000億ドル突破 需要拡大で生産増強が急務に
2017年、世界半導体市場は2016年比21.6%増の4122億ドルを記録し、半導体史上初めて4000億ドルを突破しました。背景には自動運転やIoT、医療などの新たな市場の拡大があり、需要は今後ますます高まりそうです。米国の半導体製造装置材料協会SEMIでは、2030年には1兆ドルに達すると見通しています。
半導体の需要上昇に伴い、半導体製造装置も市場を伸ばしています。SEMIが発表した2017年末市場予測では、半導体製造装置の世界販売額は2016年比36.5%増の559億ドルとなり、過去最高を更新する見込み。
日本の2017年市場も伸び率29.9%の60.2億ドルで、ほぼ10年ぶりの高水準をマークしました。
活況を見せる半導体市場ですが、生産増強が急務であるともいえますよね。さらなる生産性向上のために、装置の高速化・高精度化、小型化などがトレンドとなっています。ここからは、半導体製造の生産性向上に向けたソリューションを解説していきましょう。
半導体製造の生産性向上ソリューション
1. 超高速移動・超高精度な位置決めをしたい
半導体製造は、半導体の基板となるウエハを製造し回路を形成する「前工程」と、ウエハからチップを切り出し組み立てる「後工程」に分類されますが、その多くの工程で正確な位置決めと高精度な制御が必要とされます。
チップ(ダイ)をリードフレームに張り付ける「ダイボンディング」や、チップとリードフレームをボンディングワイヤで結ぶ「ワイヤボンディング」を行う装置は、特に超高速・超高精度な動きが求められます。
ボンディングの生産性向上には、ACサーボドライブΣ-7シリーズが役立ちます。最高回転速度が6000min-1のサーボモータで高速移動に対応し、24bitの高分解能エンコーダにより高精度な位置決めを実現、ミクロン単位の精密移動に対応します。
●位置決め精度を向上して、ワークの小型・微細化に対応
また、サーボパックでは、様々な振動抑制機能をオートチューニングで簡単に自動調整でき、装置のタクトタイムを短縮できます。
Σ-7シリーズは、ボンディングのほか半導体製造のさまざまな工程で活用いただけます。
2. ガントリ機構特有のムダなトルクやメカ破損を未然に防ぐ
フリップチップボンディングマシンや半導体検査装置(ICハンドラ)に使用されているガントリ機構は、機差や組立誤差によってムダなトルクが発生したり、X軸がねじれてメカ破損が発生し、ラインを停止させることもあります。
こうした課題には、ガントリ駆動に有効な3つの機能を内蔵したACサーボドライブΣ-7WサーボパックFT70仕様が最適です。
・位置補正テーブル機能
位置補正テーブルの情報をもとに、機差を補正して軸間のトルク干渉を抑えながら2軸を動かす機能。マシンを高速に動かしタクトタイムを向上します。
・アラーム発生時協調停止機能
図中のA軸がアラーム停止した場合でも、停止動作中の軸の位置を目標としてB軸を協調停止し、X軸のねじれを防止します。
・軸間偏差検出機能
2軸間の位置偏差をモニタリングし、設定されたしきい値を超えるとアラームやワーニングで知らせる機能で、メカ破損やライン停止を未然に防ぎます。
3. ウエハの搬送、ロボットで“速くて滑らか”な動きを実現
半導体の基板となるウエハ製造はクリーンルーム内で行われます。ここでも重要なのは正確さとスピードです。
高クリーン域で稼働できるウエハ搬送ロボットSEMISTAR-Mシリーズは、高精度・高速かつ低振動で滑らかな動きが特長で、サイズ300mmのウエハの搬送・移載作業に活用できます。半導体製造ラインから供給されるウエハキャリアと半導体製造装置の間でウエハを受け渡しする装置EFEMの中でも使われています。
また、真空対応ロボットSEMISTAR-Vシリーズは、可搬質量は最大で95 kgまで対応でき、高真空中での大型サイズの有機ELガラスやマスク、液晶ガラス、太陽電池用ガラス基板などの搬送に最適です。
安川電機はこれらのモーションコントロール技術とロボット技術で、半導体製造の生産性向上に貢献していきます。各製品の詳細な特長や仕様については、ぜひ製品ページをご覧下さいね。
解説のポイント
- 自動車やIoTなど新たな分野での需要拡大で、半導体市場は活況。生産性向上が求められている。
- Σ-7シリーズで、ボンディングなど超高速・超高精度な動きに対応できる。
- クリーンルーム内のウエハ搬送・移載には安川電機のウエハ搬送ロボットを活用できる。