これまでにない社会変革を起こすと期待される、新しい通信規格「5G」。5Gの世界需要は今後10年で300倍になるといわれています。この5Gに対応したデバイスや応用サービスの創出には、電子部品が欠かせません。今回は5Gの基礎から、5G関連市場の動向、電子部品製造のソリューションまで解説していきましょう。
5Gとは? 5Gの普及で何が変わる?
5Gとは「第5世代移動通信システム」という新しい通信規格で、高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続が特徴です。
5Gが普及することで本格的なIoT時代が到来し、これまで不可能だったさまざまなサービスが生まれるだけでなく、地域活性化や人手不足・労働生産性の向上といった社会的課題の解決にもつながると期待されています。
5Gが影響を与える業界 自動車業界にも注目
私たちにとってもっとも身近な5Gといえば携帯電話。2020年3月のサービス開始後コロナ禍で一時動きが停滞していたものの、今年秋頃になり、5G対応機種や5Gプランの発表、対応エリアの整備拡大などの動きが活性化しています。
5Gが影響を与えるのは携帯電話・通信業界だけではなく、総務省は「自動車分野」「産業機器分野」「ホームセキュリティ分野」なども対応領域になると想定しています。*
特に自動車業界は近年「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」が技術トレンドとなっており、2030年には先進国のすべての新車が常時インターネットに接続(コネクテッド)されるともいわれています。さらに安全性の高まりから自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の技術も急速に進化しています。
これらの技術には5Gの応用が期待されており、世界各国で自動車への応用を念頭に自動車業界との連携や実証などが進んでいます。*
5Gは業界の垣根を超え、民生・産業用途問わずさまざまな影響を与えると予想されます。
*出典:
総務省,「2020年の5G実現に向けた取組」(2018年12月18日), 7頁
用語解説
■CASE
Connected(コネクテッド/コネクティビティ/接続性)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング/シェアード/共有)、Electric(電動化)の頭文字で、自動車の技術革新やサービスの新たな潮流を表す言葉。元々は2016年開催のパリモーターショーで、独・ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長が、同社の世界戦略として提唱した造語。
■ADAS(エーダス)
先進運転支援システム。Advanced Driver-Assistance Systemsの頭文字をとったもの。外部情報を基に、ドライバーの安全・快適な運転を支援し、交通事故を未然に防止する機能の総称。ACC(車間距離制御)システム、自動ブレーキ、前方衝突警告などが代表的。
5Gの世界需要は今後300倍に! 電子部品業界の動きは?
5Gの世界需要の見通しは、2030 年には 168.3 兆円となり、2018 年と比べて約300倍に拡大する見通しです(図2)。品目別には、IoT機器は自動運転車やロボット、ネットワークカメラなどが需要を牽引するとみられます。*1(2019年12月時点の見通し。新型コロナウイルスによる影響は考慮されておりません)
こうした5Gの対応デバイスやサービス創出に欠かせないのが電子部品です。
JEITAの発表によれば、2019年度の電子部品市場は米中貿易摩擦の長期化などの経済不安から景況感が悪化し、設備投資の抑制につながったことで前年比94.6%のマイナス成長となりました。
また、新型コロナウイルスの流行により、2020年1月~3月の出荷への影響は軽微だったものの4月以降は大きな影響が出ると見られ、2020年度の先行きは不透明だといいます。*2
しかしながら、2020年は5Gサービス開始に伴う「端末の高機能化、映像解析・伝送技術向上、AIによるビッグデータ解析技術の革新」などにより、新たなサービスの創出とそれに対応する電子部品・デバイスの伸張が期待されています。*3
また、2019年度の自動車販売台数は減少したものの、先進運転支援システムの高度化などにより自動車向けの電子部品需要も拡大傾向です。*2
電子部品の用途別構成比を見ると、「通信機器」「PC・周辺機器」「自動車」で全体の約7割を占めています。その中で車載用電子部品の需要が、通信機器用途を上回る時期も出てきていることに注目です(図3)。
2018年の4-6期はJEITAの調査開始以来、初めて自動車が最大構成になり、2019年1-3月期はその差が広がっています。
2019年度を通して見ても、通信機器31.0%に対し自動車29.1%と、通信機器が若干多いものの自動車の存在感が増している状況です。*4
コロナ禍で先行き不透明な状態ながら、5G時代を見据え通信機器・自動車いずれも部品需要は高まる見込み。日本の電子部品の「高信頼性」という特長をさらに高めることで、新たな市場での競争力を高めることができるのではないでしょうか。
*1 出典: JEITA,「JEITA、5G の世界需要額見通しを発表 」(2019年12月18日)
*2 出典: JEITA,「調査統計ガイドブック2020-2021」(2020年),41頁
*3 出典: JEITA,「電子部品産業の世界生産見通し」(2019年),8頁
*4 出典: JEITA,「調査統計ガイドブック2020-2021」(2020年),42頁
電子部品製造、さらなる信頼性向上に向けたソリューション
安川電機では、電子部品の高品質化、高精度化、生産性向上といった、生産現場のニーズに応えるさまざまなソリューションを展開しています。電子部品製造ラインにはさまざまな工程がありますが、今回はその中でもプレス加工の工程に焦点を当て、当社が提供するソリューションの中からいくつかをご紹介します。
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・ セルのデータを活用し、セル生産の品質・生産性向上
電子部品の加圧工程において、当社のYRMコントローラ(仮称)があらゆるデータを収集・蓄積し、そのデータを基に、品質を安定させる最適なプレス圧を指令します。▼動画で見る▼
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・ 高精度なプレス制御で製品の品質を向上
当社のサーボには用途に応じたさまざまなオプションがありますが、Σ-7S FT40,F41「プレス・射出成形機能オプション」もそのひとつです。
圧力センサ信号をフィードバックし、高精度な圧力制御が可能になります。シームレスな制御切り替えでタクトタイムの向上にもつながります。▼動画で見る▼
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・ 同調位相制御で複数の軸を同期させて均一に加圧
複数軸で加圧を行う場合に、コントローラMP3300とサーボΣ-7を使用した同調位相制御により軸間変異のない均一な加圧を実現します。 -
・ 位置決めを高速・高精度化
位置決めの精密な制御に、新世代オープンフィールドネットワークMECHATROLINK-4を活用し、高速化、高精度化を実現できます。▼動画で見る▼
e-メカサイトの「用途・事例」では、今回ご紹介したプレス工程向けソリューション以外にも、さまざまなソリューションや当社のおすすめ製品をご紹介しています。また、YASKAWAコンタクトセンタからも是非お気軽にお問い合わせください!
解説のポイント
- 新たな通信規格5Gの普及によって、これまでにないサービスの創出や社会的課題の解決が期待されている。
- 5G関連の注目市場は通信機器と自動車。搭載部品の増加により電子部品の需要が高まると見られる。
- 安川電機では電子部品のさらなる信頼性向上に向けたソリューションを提供している。