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人手不足で水道水がピンチ!?
上水道事業の未来を救う
ビッグデータ活用ソリューション

2021.06.22

豆大福先生への質問豆大福先生への質問

上水道施設で浄水作業に従事していますが、職員の減少や技術者の高齢化、
これに伴う運転ノウハウ・技術伝承の難しさが目立ってきたように感じます。
ノウハウを残し、安定的に運転していく方法はあるでしょうか?


豆大福先生

私たちが安心して飲める水道水を日々作り出している上水道施設(浄水場)。環境問題がクローズアップされる中で水の重要性はますます高まりつつありますが、実は職員の減少や高齢化など様々な課題を抱えています。今回は、そうした上水道を取り巻く現状と、ビッグデータを活用した課題の解決方法をご紹介します。


毎日使う"水道水"が人手不足でピンチに?-上水道事業をとりまく課題

毎日使う水道水が人手不足でピンチに?-上水道事業をとりまく課題

私たちが毎日使う水道水。日々の生活と密接な関わりをもつ上水道は、高度化する社会の中でライフラインとしての責任、そしてより高い信頼性が求められています。

一方、近年では、人口減少や財政ひっ迫、高度経済成長期に整備された水道施設の老朽化、担当職員の減少、大規模自然災害のリスク増大など、広範囲にわたる課題を抱えているのが現状です。

上水道事業の職員減少・技術者不足が課題―10人未満で運用する事業も

特に、上水道事業に従事する職員の減少、少子高齢化に伴う技術者不足は深刻で、上水道事業における職員数は、ピーク時の約30年前(1980年)に比べて約3割も減少しています。(図1)

水道事業における職員数の推移
(図1)厚生労働省,「水道の現状と水道の現状と水道法の見直しについて」, 14頁を基に当社作成

出典:厚生労働省 医薬・生活衛生局 水道課,「水道の現状と水道法の見直しについて」
<https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-
Kouseikagakuka/0000195380.pdf>(最終閲覧日:2021年6月17日)

全国には上水道・簡易水道合わせて約7000以上の事業者が存在しています(2015年末時点)。その多くを占めているのが、小規模で職員数が少ない水道事業者です。

下の表(図2)を見てみると、上水道事業の約8割を占める、給水人口5万人未満の上水道事業では、平均で約10人未満の職員で運営していることが分かります。そのうち、技術職は平均で4人未満しかいません。ここからさらに職員数が減少した場合、上水道の信頼性にかかわる可能性も考えられます。

水道事業における職員数の規模別分布
(図2)厚生労働省,「水道の現状と水道の現状と水道法の見直しについて」, 14頁を基に当社作成

出典:厚生労働省 医薬・生活衛生局 水道課,「水道の現状と水道法の見直しについて」
<https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-
Kouseikagakuka/0000195380.pdf>(最終閲覧日:2021年6月17日)

ノウハウ継承したくても「施設のデータが整理されていない」ケースも

こうした課題の中で安定した水道水の供給を継続するためには、ベテラン運転員のノウハウを継承し、効率的に運転することが必要ですが、さらに別の課題もあります。

2016年12月に厚生労働省水道課が実施した調査によると、上水道事業者の約1/4が水道施設のデータを「あまり整理していない」「整理していない」と回答しており、これがノウハウの継承に影響を及ぼしているおそれがあるのです。

上水道事業者のデータの整理状況
(図3)厚生労働省,「水道の現状と水道の現状と水道法の見直しについて」, 15頁を基に当社作成

出典:厚生労働省 医薬・生活衛生局 水道課,「水道の現状と水道法の見直しについて」
<https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-
Kouseikagakuka/0000195380.pdf>(最終閲覧日:2021年6月17日)

こうした、上水道事業の職員減少、少子高齢化に伴う技術者不足、そしてベテラン運転員のノウハウ継承の難しさといった課題を解決する一つの手法として、安川電機ではビッグデータを活用した薬品注入量運転支援システムを構築しました。

私たちが普段当たり前のように使っている水道水の背景には、こんな課題があるのですね。ここからは、浄水場での具体的な課題と、安川電機のソリューションを見ていきましょう。

浄水作業の課題とは?ビッグデータ活用の薬品注入量運転支援システムで解決

浄水場では、私たちが安全に飲める飲料水を提供するため、河川などからくみ上げた水(原水)に含まれるごみを取り除きやすくしたり、消毒したりするために薬品を注入しています。

■浄水場における浄水作業のフロー

(浄水場における浄水フロー

薬品注入作業の課題

薬品注入作業の課題

しかし、この薬品注入の作業では、濁度・pH・アルカリ度などの水質データや機器の運転状況など様々なデータを基に薬品注入量などを決めるため、設定値の決定に多くの労力がかかっていました。また、先述のように水道施設のデータがあまり整理されてないケースもあり、薬品注入量の判断はベテラン運転員のノウハウと経験に頼らざるをえない状況でした。

薬品注入量運転支援システムとは?

薬品注入量運転支援システムとは?

この薬品の注入量をガイダンスするシステムが、薬品注入量運転支援システムです。

IoTでデータを収集し、ベテラン運転員のノウハウ・経験を蓄積したビッグデータからAIによる機械学習で薬品注入量の予測値を算出します。これにより、経験が少ない技術者でもリアルタイムで安定した薬品注入量を決定することができます。

水質などのセンサーデータを取り込む以外で他に特別な機器は不要のため、小規模な施設であっても簡単に既存の設備へ導入できることも特長です。導入前には、机上シミュレーションを実施し、予測精度を確認することもできるため、安心してお使いいただけます。

また、オンプレミス(浄水場内設置)とクラウドのいずれでも導入可能なため、幅広いニーズに対応できます。

深刻化する人手不足や技術の継承にお困りの際は、こうしたIoTやAI、ビッグデータを活用したシステムをご検討されてみてはいかがでしょうか。

充実した運転支援システムで、上水道の安定的・効率的な運転を実現

安川電機では、ますます多様化するニーズにお応えするため、次世代を見据えた広い発想と現場ベースの細やかな視点で、信頼性の高い水処理用電気システムを提案します。

今回ご紹介した薬品注入量運転支援システムをはじめ、「水運用システム」や「降雨時運転支援システム」など、充実した運転管理支援システムについては、こちらの用途・事例でもご紹介しています。お問い合わせやご相談はフォームよりお気軽にご連絡ください!

解説のポイント

  1. 上水道事業はライフラインとしての責任、より高い信頼性が求められるが、一方で様々な潜在的な課題を抱えている。
  2. 特に上水道事業に従事する職員の減少、少子高齢化に伴う技術者不足、ノウハウの継承の難しさが課題になっている。
  3. 安川電機では、ベテラン運転員のノウハウ・経験を蓄積したビッグデータを活用する、薬品注入量運転支援システムを構築。経験が少ない技術者でも安定した作業が可能に。

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