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二次電池・リチウムイオン電池の基礎知識や市場動向
xEV向け電池市場は10年で6.5倍に!?

2022.08.29

豆大福先生への質問豆大福先生への質問

国内でもxEVの開発・普及が盛り上がっていますよね。
それに伴い電池の需要も高まっていると思うのですが、
電池の市場動向や製造工程について基本から知りたいです。


豆大福先生

xEV(電動化された自動車の総称)には、充電して繰り返し使える「二次電池」が搭載されています。xEVだけでなくスマホやノートPC、ワイヤレスイヤホンなどにも使われていて、今や私たちの生活に欠かせない存在になっています。今回は、二次電池の基礎知識や市場動向、世界シェアなどを解説。また、二次電池の製造工程を追いかけながら、製造現場や製造装置の自動化&最適化ソリューションをご紹介します。


電池の基礎知識:二次電池は充電して繰り返して使える電池のこと

電池の種類を大きく分けると、「化学電池」と「物理電池」があり、「化学電池」は電極材料の組合せだけで40種類、形や大きさで分けると4000種類以上にのぼるといわれています。

私たちが日常的に使用しているのは「化学電池」で、一回使い切りの「一次電池」と、充電して繰り返し使える「二次電池」、水素と酸素の化学反応で電気を発生させる「燃料電池」に分けられます。

■電池の種類

電池の種類

「一次電池」と「二次電池」が電池全体の生産金額に占める割合を見ると、一次電池は10%以下、二次電池は2012年に初めて90%を超えました。

リチウムイオン電池とは?

鉱工業指数では二次電池を「鉛蓄電池」「アルカリ蓄電池(主にニッケル・水素電池)」「リチウムイオン電池」の3系列に分けていますが、その中でも著しい成長を見せているのが「リチウムイオン電池」です。EVをはじめ、私たちに身近なスマホやノートPC、ワイヤレスイヤホンなどに使用されています。今回は主にこのリチウムイオン電池について説明していきます。

リチウムイオン電池(LIB:Li-ion Battery)とは、リチウムイオンにより作動する蓄電池で、1991年に日本で実用化されました。電解液の中で正極と負極の間をリチウムイオンが移動し充放電を行う仕組みで、他の蓄電池よりもエネルギー密度が高く容量が大きいことから普及が進みました。同じ二次電池の鉛蓄電池やニッケル・水素電池から需要がシフトしています。

■リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池の構造

■リチウムイオン電池の歴史

リチウムイオン電池の歴史

経済産業省,「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」などの資料を基に当社作成

市場動向:約8割がxEV向け 世界市場は約10年で6.5倍に

リチウムイオン電池の用途は、大きく「xEV用」「小型民生用」「ESS(電力貯蔵システム)/UPS(無停電電源装置)/BTS(無線基地局)用」に分けられます。世界市場は年々拡大しており、2021年の市場は2020年比で57%増。2022年は2020年比で84%増となる予測です。

従来はスマホやノートPCなどに使われる小型民生用の需要が高かったものの、現在はxEV向けの大型の需要が急速に高まっています。欧州や中国などを中心に進む“EVシフト”(ガソリン車やディーゼル車から電気自動車へ移行すること)や、国内自動車メーカーでもEVの開発計画が多数あることから、xEV向けがけん引し、今後も市場は拡大していくと予想されます。

xEV市場だけを見てみると、2016年には1兆4,260億円だった市場は、2021年は8兆1,780億円見込みへと拡大。2025年は9兆3,890億円に達すると予測されています。約10年で、6.5倍にまで拡大する予測です。∗1

■リチウムイオン電池の世界市場

リチウムイオン電池の世界市場
富士経済,「2022 電池関連市場実態総調査 上巻 電池セル市場編 プレスリリース」などの資料を基に当社作成

コイン型の二次電池(リチウムイオン電池)も需要に伸び

実はコイン型の二次電池市場も伸びを見せています。けん引しているのはワイヤレスイヤホン。使っている方も多いのではないでしょうか。これまでノートPCやデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラが主な用途でしたが、市場は低迷していました。しかし2017年からワイヤレスイヤホンに採用されたことを機に需要が急拡大。2025年には2020年比2.7倍の1,696億円に達すると予測されています。∗1

xEV用リチウムイオン電池の世界シェア:中韓メーカーがシェア拡大

xEV用リチウムイオン電池の世界シェアを見てみると、市場の拡大に伴い中韓メーカーがシェアを拡大。日本企業も上位に食い込んでいますが、国を挙げてEVシフトを急速に推し進める中国のメーカーが存在感を見せている状況です。∗2

■車載用リチウムイオン電池の世界シェア
車載用リチウムイオン電池の世界シェア

経済産業省,「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」などの資料を基に当社作成

∗1 出典:富士経済,「2022 電池関連市場実態総調査 上巻 電池セル市場編 プレスリリース」<https://www.fuji-keizai.co.jp/file.html?dir=press&file=22050.pdf>(最終閲覧日:2022年8月16日)
∗2 出典:経済産業省,「蓄電池産業戦略 中間とりまとめ」<https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy/battery_chukan_torimatome.pdf>(最終閲覧日:2022年8月16日)

高性能で安全性の高い電池製造ソリューション

電池の性能がEVの売り上げを左右する?

リチウムイオン電池の特長はエネルギー密度が大きいことです。密度が大きいこと=充電がもつということなので、車載向けなら一回の充電あたりの走行距離が伸び、小型民生用なら機器を使える時間が伸びます。EVの世界では、車載電池の性能がEVの売り上げを左右するともいわれています。

一方、リチウムイオン二次電池は液漏れによる発火などの事故も起きており、より安全な電池を求める声が高まっています。高性能で安全性の高い電池製造が期待される中、安川電機では二次電池製造現場や製造装置の自動化&最適化ソリューションを提案しています。

二次電池向けソリューションカタログはこちら

リチウムイオン電池の製造工程とソリューション

ここからは、現在主流のリチウムイオン電池の製造工程を追いかけながら、安川電機の製品を使ったソリューションをご案内していきましょう。

リチウムイオン電池の製造工程とソリューション

①撹拌工程 —ムラのない均一な撹拌

①撹拌工程 —ムラのない均一な撹拌

まず、活物質溶液などをペースト状にする撹拌の工程です。ここでは撹拌装置が使われます。ここでは、安川インバータGA500、GA700でムラのない均一な撹拌を実現します。モータトルク監視やセンサフィードバックで粘度管理が可能です。さらにリアルタイムデータの活用も容易です。

撹拌工程の詳しいソリューションを見る

②電極工程 —安定した電極箔の加工

②電極工程 —安定した電極箔の加工

次に、金属箔に溶液を塗布し、乾燥させます。圧縮の工程は密度を上げるために行う工程で、プレス装置とプレスロール装置で薄くプレスします。その後、電池の大きさや形に合わせて電極を裁断します。
この工程では、安定した電極箔の加工のために、当社の長年培った搬送技術(Roll to Roll技術)と電源システム技術を活用し、より高品質で省エネルギーな装置の実現をお手伝いします。

電極工程の詳しいソリューションを見る

③セパレータ製造工程 —製造装置の生産性と品質向上

③セパレータ製造工程 —製造装置の生産性と品質向上

正極と負極の間に挟み込むセパレータを製造する工程です。セパレータ製造装置の生産性と品質向上には、コンポーネントの更なる性能アップ、設備機器の運転状況の遠隔監視やデータ活用、しわや傷を生じさせない機能などが必要です。
当社は最新技術を搭載した豊富な製品ラインアップと、それらを取りまとめる高いエンジニアリング力とサポート力で、お客様のニーズにお応えします。

【当社製品を使った機器構成事例】(成膜機+スリッタ)
セパレータ製造工程ソリューション

④電極層製造工程 —積層・巻回それぞれに高度な制御を実現

④電極層製造工程 —積層・巻回それぞれに高度な制御を実現

電極層製造は、正極と負極を重ねていく工程です。二次電池のセル形状には、円筒型、角型、パウチ型があり、正極と負極の間にセパレータを挟みながら交互に積み重ねる「積層工法」か、フィルムのように巻き取る「巻回工法」によって製造されます。
当社は、それぞれに要求される技術や機能に対応し,高度な制御を実現するACサーボドライブやマシンコントローラなどの最適なコンポーネントを多数保有しています。また,コンポーネントで収集したデータの見える化と活用のソリューションもご提案いたします。

【当社製品を使った電極層製造のシステム構成例】
電極層製造工程ソリューションを見る

⑤タブ形成、切断 —搬送を止めずにタブ成型を実現

⑤タブ形成、切断 —搬送を止めずにタブ成型を実現

変化するタブの位置やサイズに追従する技術と製品で、高精度な作業を実現し、製造工程の課題解決に貢献します。搬送軸の移動量をガルバノスキャナに把握させることで、搬送を止めずにタブ成型を行います。

タブ形成,切断の詳しいソリューションを見る

⑥電池セル組立て —材質や加工、大きさに応じたレーザー溶接を容易に

⑥電池セル組立て —材質や加工、大きさに応じたレーザー溶接を容易に

幾重にも重なった正極と負極、セパレータをケースに入れ、電極を溶接します。電極液をケースの中に注入し、ケースに蓋をします。
ここでは、ガルバノスキャナの豊富なラインアップにより、最終工程に求められる品質と信頼性にお応えするレーザー溶接をご提供します。様々な材質に対応し、スパッタレス、深い溶け込み溶接はもちろん、MOTOMANとの組合せによる溶接も可能です。

電池セル組立ての詳しいソリューションを見る

⑦モジュール・ユニット組立て —高難度でも安定した作業を効率的に

⑦モジュール・ユニット組立て —高難度でも安定した作業を効率的に

モジュールやユニット組立ての自動化に必要なロボットを幅広くラインアップしています。 モジュール・ユニット組立工程で必要とされる様々なアプリケーションでも、難度が高く安定した作業を効率良く実現します。二次電池製造工程における高度な作業の自動化、効率化、重量物の搬送などを実現するソリューションを提供します。
車載にも対応しています。

車載にも対応

安川電機はこれらの製品で、高容量・高密度かつ、より安全な二次電池の製造・開発に貢献していきます。こちらのカタログでは、二次電池製造の各工程に対する詳細なソリューションをご紹介しています。

二次電池製造向けソリューションカタログはこちら

解説のポイント

  1. 電池は一次電池と二次電池に分けられる。充電して繰り返し使える「二次電池」は、スマホやノートPC、EVなどに使用され、生活に欠かせない存在に。
  2. なかでもリチウムイオン電池は、xEV向けがけん引し、2016年からの約10年で6.5倍にまで拡大する予測。
  3. 安川電機では、高容量・高密度かつ、より安全な二次電池の製造・開発に貢献するトータルソリューションを提供している。

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