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工場の機械設備を遠隔で監視するには?
シリアル通信とEthernet通信の特長や違いを解説!

2022.05.24

豆大福先生への質問豆大福先生への質問

生産現場とオフィスの距離が離れており、生産現場に出向く以外、オフィスでは具体的な情報を確認できません。そのため、機械設備のデータ確認やトラブル対応に時間がかかっています。生産現場を監視する方法はありますか?


豆大福先生

生産現場と物理的に距離が離れている場合など、稼働状況を確認するために毎回機械設備の場所まで移動するのは手間がかかります。このような場合は、生産現場をEthernet通信でつなぐことで、遠隔監視ができるようになります。今回は、「Ethernet通信」や、「シリアル通信」との違い、「プロトコル」についても解説します。


機器同士を接続する「シリアル通信」「Ethernet通信」とは?

機器同士を接続する「シリアル通信」「Ethernet通信」とは?

生産現場がEthernetにつながっていない場合、機械設備の監視やトラブル対応に手間も時間もかかります。例えば1階に機械設備があり2階にオフィスがあるケースなどでは、毎回生産現場まで移動しなければいけません。

そこで、生産現場をEthernetでつなぐと、オフィスから生産現場の機器状況を確認・監視することができるようになります。従来は現場に出向くしかなかったトラブル対応やメンテナンス管理が容易になります。

機器同士を接続するにはいくつかの方法がありますが、最近は通信による接続が普及してきています。ここでは、「シリアル通信」と「Ethernet通信」について比較していきます。まずは用語の解説です。

■シリアル通信

シリアル通信は、従来製造業の現場で機器同士の接続に使用されてきた通信オプションです。フィールドネットワークといわれるものや、RS232C/422/485がシリアル通信にあたります。シリアル通信は、省配線で配線工数の削減というメリットもある一方、LAN回線とは別回線のため、遠隔監視が難しくなるという課題がありました。

■Ethernet通信

「Ethernet(イーサネット)」とは、会社や工場内でパソコンや機器を有線で接続する際に使われる通信規格です(LANケーブル、光ファイバー、同軸ケーブルといった有線接続の規格)。世界各地で普及している規格の一種で、製造業の世界でも主要な規格として使用されています。インターネットを経由してデータをやりとりするため、遠隔監視も簡単に実現できます。

シリアル通信とEthernet通信の違い Ethernet接続のメリットは?

ここからは、シリアル通信と、Ethernet通信の特長や構成の違いを解説していきます。

・特長の違い

特長の違い

・構成の違い

構成の違い

まず、シリアル通信では、上図のようにドライバ層の機器(インバータ)とライン制御層のライン制御コントローラを直接つなぐことができず、その中間にデータを変換するための装置制御コントローラを挟むことになります。データはこの装置制御コントローラを経由して取得する必要があります。さらに、データを分割して送信するため、送受信データ量が小さく通信速度が遅いという課題もあります。

そうしたシリアル通信の課題を解決するのが、Ethernet通信です。Ethernet通信ではドライバ層の機器(インバータ)とライン制御コントローラを直接つなぐことができます。そのため、中間の装置制御コントローラを経由することなく、インバータの状態を監視することができます。また、データ送受信量も大きくなります。

シリアル通信で遠隔操作はできないのか?

比較表

シリアル通信で遠隔監視を実現したい場合には、ライン制御コントローラとセル制御の装置制御コントローラをプログラミング(調整)する必要があります。そのうえで、オプション装置(OPC-UAなど)を経由してEthernetに接続しなければなりません。シリアル通信/Ethernet通信に関わらず、コントローラは本来ラインを動かすための装置です。ただし、入出力点数も多いため多くの情報を保有しており、遠隔監視は不可能ではありませんが、コントローラへの影響と調整の手間がネックです。

一方、Ethernet通信の場合、装置制御コントローラに影響を与えることなく、インバータの状態を監視できます。装置制御コントローラは本来の「制御」という役割に集中できるようになります。

インバータサポートツールDriveWizardは、パソコンとインバータをEthernet通信で接続することで、インバータの遠隔監視モニターとして使用することができます。
>DriveWizardに関するよくある質問を見る

Ethernet通信をするには? 接続の際には「プロトコル」に注意

Ethernet通信をするには? 接続の際には「プロトコル」に注意

ここまで、「Ethernet」という通信規格について説明しました。実際にEthernet通信でオフィスのパソコンと工場のインバータを接続する際は、インバータに産業用Ethernetの通信オプションカードを装着します。

また、Ethernetを含めどの通信規格においても、機器同士を接続する際には「プロトコル」に注意する必要があります。「プロトコル」とは、機器同士がデータのやりとりを行う際の規約や手順の取決めのことで、簡単にいえば言語のようなものです。機器をつないで通信する際には、プロトコルを合わせる必要があります。

例えば異なる言語を話す人同士が携帯電話で会話する際、「この通話のときは○○語で話そう」とルールを決めるイメージです。携帯電話が「通信オプション」、キャリアが「通信規格」、使う言語が「プロトコル」と考えると分かりやすいかもしれません。

プロトコルを合わせるには?

プロトコルを合わせるには?

従来は、機器同士でプロトコルを合わせるためには、各プロトコル用の通信オプションカードを機器に装着する必要がありました。

安川電機では、1枚のカードで産業用Ethernetの各プロトコルに対応できる「Multi Protocol Ethernetオプションカード」を提供しています。
インバータに取付けた「Multi Protocol Ethernetオプションカード」上のスイッチ設定で、簡単にプロトコルを切替えできます。 なお、対応プロトコルは随時拡充しています。

プロトコルを合わせるには?

今回ご紹介した、Ethernetを使用して機械設備を遠隔監視する方法や、Multi Protocol Ethernetオプションカードに関する疑問やご相談は、以下のお問い合わせフォームからお気軽にお尋ねください。

解説のポイント

  1. コンピューターと設備機器をEthernet接続することで、中間の装置制御コントローラを使わずにデータを取得し、遠隔監視できるようになる。
  2. 「Ethernet」とは、機器を有線で接続する際に使われる通信規格。製造業の世界でも主要な規格として使用されている。
  3. 機器同士を接続する際、各種プロトコルに対応したMPEカードを使用することで、プロトコルごとに通信オプションカードを変える手間が不要になる。

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