
レーザー溶接とは、アーク溶接のような線状の溶接を、レーザービームを使って行う溶接のことです。メリットも多い一方、ワークによってはうまく溶接できない場合もあります。今回はその課題を解決する方法について解説しましょう。
レーザー溶接とは?メリットと課題
まずはレーザー溶接の基本から説明しましょう。
溶接には、熱を使うアーク溶接や大電流を使うスポット溶接など、色々な方法があります。その中でレーザー溶接は、レーザービームによって金属を融解させて接合させる溶接方法を指します。
高精度で高速な加工ができるため、電子部品などの小さなワークから自動車製造まで、多岐にわたる用途で採用されている溶接方法です。
人が行うこともありますが、自動化が進む自動車製造や部品製造の業界では、ロボットによるレーザー溶接も行われています。
■レーザー溶接の種類
さらにレーザー溶接の中でも、媒質によって、CO2レーザー溶接、YAGレーザー溶接、ファイバーレーザー溶接など、いくつかの種類に分類されます。
近年では光ファイバー自身がレーザーを発振するファイバーレーザーによる溶接も行われています。また、ファイバーレーザーは、ビーム品質が向上したことにより長焦点距離でも小さな焦点径を得られるようになりました。
ファイバーレーザーは、ミラーを利用して離れた位置から高速に焦点位置を移動することのできる「リモートレーザー溶接」に適しています。
ここでは、様々なレーザー溶接の方法を代表してリモートレーザー溶接の特長・メリットを解説します。
リモートレーザー溶接の特長・メリット
・自由な位置・方向からレーザーを照射することができる
レーザー発振器からレーザーファイバーを介して、ワークに自由な位置・方向からレーザーを照射することができます。立体形状のワークや複雑な軌跡が必要な場合でも対応が可能です。
・高い精度でワークを加工することができる
レーザービームの集光径は数百ミクロンにまで小さくすることができ、高い精度でワークを加工することができます。小さいワークや微細な加工に対応できます。
・高速で加工できる
レーザーの出力に応じて加工スピードを上げることができます。また、アーク溶接に比べて溶接部の幅が狭く、溶け込みの深さが深いため、高速で加工でき作業時間を短縮できます。
レーザー溶接の課題
・ワークに位置ずれやギャップがあると対応が難しい
レーザー溶接には接合するワーク同士の密着精度が重要とされます。ワーク同士の位置がずれていたり板厚に差があったりすると、うまく溶接できない場合があります。
安川電機ではこれまでにも、高速・高軌跡精度のレーザー溶接を実現するロボットを展開してきましたが、こうしたワーク由来の課題にも対応するため、ワークに位置ずれやギャップがある場合でも裕度の高い溶接を実現できる、小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」を開発しました。

これまで溶接パッケージはアーク溶接向けだけでしたが、このたびレーザー溶接向けも加わりました。
レーザー溶接で、位置ずれ・ギャップのあるワークに対応する方法
小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」は、小型ガルバノスキャナーヘッドを小型ロボットMOTOMAN-GP25に搭載し、ファイバーレーザーを熱源とした「ファイバー導光型」のレーザー溶接を行うものです。
安川電機のガルバノモータの技術とリモートレーザー機能で培った光学技術により、8kWの高出力レーザーに対応しています。
■パッケージ構成
■レーザー溶接の課題解決方法
ここからは、小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」の特長と、レーザー溶接の課題解決方法を説明していきましょう。
「ウォブリング溶接」で裕度の高いレーザー溶接を行う
小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」は、ガルバノスキャナーヘッドに円や線などのウォブリングパターンを高速に描かせながらロボットを動作させる「ウォブリング溶接」を行うことが特長です。
▶【実演動画】ウォブリング溶接の実演を見る
ウォブリング溶接は、溶接ビードの幅を増大させ、太くきれいなビードを高速で形成できます。これにより、従来のレーザー溶接では対応の難しかったワークの位置ずれやギャップに対し、裕度の高い溶接を実現できます。
「ロボットのプログラミングペンダント」で、ワークに応じて溶接条件を設定
溶接パターンや速度などの溶接条件は、全てロボットのプログラミングペンダントで設定できます。たとえば従来対応の難しかった板厚の異なるワークの溶接も、ウォブリング溶接の円半分を高出力、もう半分を低出力にするといった設定変更を行うことで対応可能となります。
また、ロボットコントローラがガルバノスキャナーヘッドを制御することで、進行方向に対するパターンの向きを一定に保つことができます。複雑な立体形状のワークに対しても、安定した溶接品質を確保できます。
小型・軽量化で省スペース!作業ブースをコンパクトに
小型ガルバノスキャナーヘッドはアークロボットに搭載できるよう小型・軽量化されており、安川電機の小型ロボット MOTOMAN-GP25に搭載が可能です。
これにより、従来のレーザー溶接ロボットシステムと比較して、設置面積の省スペース化を実現できます。
実際の小型ガルバノスキャナーヘッドによるレーザー溶接の様子
こちらの動画では、裕度の高いウォブリングレーザー溶接の実演をご紹介しています。ぜひご覧ください。
∗動画は2018年に開催された国際ウエルディングショーに出展した際のものです。
これまで対応が難しいとされてきたワークに対してもレーザー溶接を実現できる、小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」。
製品の詳細については、ぜひお気軽にお問い合わせください。

解説のポイント
- レーザー溶接はメリットも多い一方、位置ずれやギャップのあるワークへの対応が難しいという課題がある
- 安川電機の小型レーザー溶接パッケージ「MOTOPAC-RL2Dシリーズ」は、小型ガルバノスキャナーヘッドによるウォブリング溶接で課題を解決できる
- 小型・軽量化されたガルバノスキャナーヘッドを小型ロボットに搭載することで、設置面積の省スペース化も可能