機器間を接続するケーブルの省配線化や、コストダウンを目的に使われてきたフィールドネットワークですが、そのリアルタイム性やデータの信頼性を活かし、最近はIoT化に向けたデータ収集にも活用できると注目されていますね。今日は、フィールドネットワークの仕組みやメリットについて学んでいきましょう。
フィールドネットワークを導入するメリットは?
フィールドネットワークとは、コントローラと各種コンポーネントを接続する産業用ネットワークのこと。“マスタ”と呼ばれるコントローラと“スレーブ”と呼ばれるサーボドライブやインバータ、I/O機器などを接続することで、省配線化にくわえ、リアルタイムに機器を制御できたり、機器の稼動データを収集したりできます。
メリット1. システムの省配線化、小型化
フィールドネットワークを使わない場合は、マスタ機器からスレーブ機器それぞれに配線をする必要がありますが、フィールドネットワークを使えば、マスタ機器と各種スレーブ機器が1本のケーブルですべてつながります。省配線化でコスト削減、マスタの小型化も可能です。
メリット2. スレーブ機器の稼働情報を収集できる
機器の稼働状況は生産性向上のための重要な要素。フィールドネットワークを使うと、スレーブ機器の駆動状況や稼働時間、機器の寿命など、多くの情報を効率的に収集することができます。
現在では、インターネットやクラウドサービスを使い、収集したスレーブ機器の情報を活用する生産性改善の動きが進んでいます。
これまでは主に省配線化などに活用されてきたフィールドネットワークですが、リアルタイムに機器の情報を収集できることで、生産現場のIoT化や予防保全に役立てられると考えられてきているんですね。
また、フィールドネットワークの中でも「オープンフィールドネットワーク」は、通信の規格をオープン化・標準化することで異なるメーカーの機器同士を相互に接続できるというもの。ユーザは用途や機能に応じて機器を自由に選び、システムを自在に構築することができるのです。
安川電機のオープンフィールドネットワーク「MECHATROLINK(メカトロリンク)」
フィールドネットワークは各社が開発しており、それぞれに得意分野が異なります。その中で安川電機が1990年代前半に開発したのが「MECHATROLINK(メカトロリンク)」です。高速モーションを得意としているため、“モーションフィールドネットワーク”とも呼ばれています。
2003年にオープン化されたMECHATROLINKは、現在汎用仕様の「MECHATROLINK-Ⅱ」と高速仕様の「MECHATROLINK-Ⅲ」の二つが製品化されています。その特長を見てみましょう。
・高い通信パフォーマンスと同期性
正確なデータを確実に伝えるため、コマンドやレスポンスの通信エラーを自動で検知し再送信するリトライ機能を備えています。また、振動やノイズに強いコネクタやケーブルに対応しているのも特長です。
・低コストでシステム構築ができる
従来モーション制御とI/O制御で別々の配線で接続していたネットワークを一つの配線に統合。モジュール、ケーブルが削減でき、低コストでシステムを構築できます。メンテナンスやシステムの拡張も容易です。
・高速&大容量通信
M-Ⅲは、伝送速度100Mbps、伝送周期31.25μsecの超高速通信が特長。また、モーション制御など定周期のデータ送受信を行う“サイクリック通信”とは別に、任意のタイミングでスレーブの情報を送受信できる“メッセージ通信”があり、メンテナンス性の向上に活用できます。
・開発が容易
マスタ、スレーブ機器にそれぞれ、通信処理を担うASICを搭載し、容易に製品に組み込むことができます。開発に必要な各種ツールが整備されており、開発期間の短縮にも役立ちます。
MECHATROLINKはどんな機械に使える?
MECHATROLINKは、電子部品実装機械、液晶製造装置、搬送機械、工作機械、産業用ロボットなどで数多く使われており、特に軸間の正確な同期や補間が必要とされる用途に最適です。
機械の制御に必要なトルク・位置・速度制御が可能で、オンライン中に速度制御から位置制御へ、位置制御からトルク制御へといった制御モードの切り替えも自由自在に行えます。
工場のIoT化をサポートする「MECHATROLINK-4」が登場!
今、生産現場はオペレーションのスマート化や、IoT・AIを活用したフレキシブルかつ安定生産の実現など、めまぐるしく変化しています。そんな中、今年11月に、さらに効率的で高度な制御を実現する「MECHATROLINK-4」が開発されました。
また、安川電機が開発したサーボアンプとエンコーダ間の通信プロトコル「Σ-LINK(シグマ・リンク)」において、製品品質の確保や予知保全のために設置されるセンサ情報なども取得できる「Σ-LINKⅡ」を開発。
安川電機では、これらの各種データを活用して生産性をさらに向上させるとともに、IoTやAIを活用した新しいものづくりの実現をサポートするとしています。
MECHATROLINK-4とΣ-LINKⅡを活用した生産システム
これらの「MECHATROLINK-4」と「Σ-LINKⅡ」は、11月29日~12月1日に開催された「システムコントロールフェア 2017」でコンセプトデモが披露され、注目を浴びました。
MECHATROLINKはこれから、同期制御のためのものという枠を超えて、IoTやAIを活用した新しい生産現場づくりへのキーになっていくといえそうですね。
解説のポイント
- フィールドネットワークは、コントローラと複数コンポーネントをつなぎ、リアルタイムにデータをやり取りする通信ネットワーク。
- 省配線化によるスペース削減、コスト削減が可能になる。
- 安川電機のMECHATROLINKは高速モーションが得意。収集データを活用し、生産現場のIoT化にも役立つ。