メカトロよろず相談所 豆大福先生に聞いてみようよ メカトロよろず相談所 豆大福先生に聞いてみようよ

豆大福が大好きな通称"豆大福先生"が
安川電機の製品にまつわる疑問や業界の
トレンドをわかりやすく解説します。

注目の「全固体電池」とは?
二次電池の基礎知識や市場動向
電池の材料市場は5年で4.1倍に

2023.09.19

豆大福先生への質問 豆大福先生への質問

xEVの開発・普及が進み、車載向け電池の需要も高まっていますよね。
「全固体電池」の話題もよく耳にするようになりました。
電池やその材料の市場動向などについて教えてください。


豆大福先生

xEV(電動化された自動車の総称)には、充電して繰り返し使える「二次電池」が搭載されています。スマホやノートPCなどにも使われていて、今や私たちの生活に欠かせない存在です。今回は、二次電池の中でも、特に「リチウムイオン電池」に関する基礎知識や市場動向を解説。また、電池製造の自動化&最適化ソリューションをご紹介します。


電池の基礎知識:二次電池は充電して繰り返して使える電池のこと

電池の種類は「化学電池」と「物理電池」に大きく分けられます。私たちが日常生活で使用しているのは「化学電池」です。その中で、一回使い切りの「一次電池」と、充電して繰り返し使える「二次電池」、水素と酸素の化学反応で電気を発生させる「燃料電池」に分けられます。

「一次電池」と「二次電池」が電池全体の生産金額に占める割合を見ると、一次電池は10%以下、二次電池は2012年に初めて90%を超えました。

■電池の種類

電池の種類

リチウムイオン電池は蓄電池の一つ

二次電池の中でも著しい成長を見せているのが「リチウムイオン電池」です。EVをはじめ、私たちに身近なスマホやノートPC、ワイヤレスイヤホンなどに使用されています。

リチウムイオン電池(LIB:Li-ion Battery)とは、リチウムイオンにより作動する蓄電池です。電解液の中で正極と負極の間をリチウムイオンが移動し充放電を行う仕組みです。他の蓄電池よりもエネルギー密度が高いこと、容量が大きいことから普及が進みました。

■リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池の構造

全固体電池とは?エネルギー密度が高く、xEVの性能向上に期待

イメージ

全固体電池とは、リチウムイオン電池の電解液を固体にしたものです。名前の通り、正極と負極を含めた部材の全てが固体で構成されています。

全固体電池の特長は、高密度と高容量です。電解質が液体の電池に比べてエネルギー密度が高くなります。密度が大きいこと=充電がもつということ。車載向けなら一回の充電あたりの走行距離を伸ばすことができるため、xEVの性能を飛躍的に向上させると期待されています。また、一つのパッケージに積層できるため、大容量化も可能です。

安全性の高さも特長です。固体のため、従来の電池のように液漏れの心配がありません。温度変化に強く、低温でも凍結せず、高温でもガス化しないというメリットがあります。

全固体電池は、これまで新部材の開発やコストなどの課題があるとされていましたが、2023年6月にトヨタ自動車が2027年にも実用化すると発表し、大きな話題となりました。また9月には、パナソニックホールディングスも、ドローンなど向けの全固体電池を2020年代後半に量産する方針を明らかにしました。次世代電池の世界市場は、2030年までに20倍以上に拡大するともいわれており、そのうちの44%を全固体電池が占める予測です。*1

イメージ

(表1)矢野経済研究所, プレスリリース「次世代電池世界市場に関する調査を実施(2019年)」などの資料を基に当社作成

市場動向:リチウムイオン電池の約8割がxEV向け “材料”市場は5年間で4.1倍に拡大

リチウムイオン電池の用途は、大きく「xEV用」「小型民生用」「ESS(電力貯蔵システム)/UPS(無停電電源装置)/BTS(無線基地局)用」に分けられます。世界市場は年々拡大しており、2021年の市場は2020年比で57%増。2022年は2020年比で84%増となる予測です。

特に急拡大しているのがxEV市場です。2016年には1兆4,260億円だった市場は、2021年は8兆1,780億円見込みへと拡大。2025年は9兆3,890億円に達すると予測されています。*2

電池市場拡大に伴って、材料の市場も拡大する見込みです。正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータなど、主な材料の世界市場は、2022年の8兆9094億円に対し、2025年に12兆2312億円規模と予測されています。2020年比では4.1倍に拡大する見込みです。*3

イメージ

(表2)富士経済, プレスリリース「リチウムイオン二次電池材料の世界市場は2025年に12兆円超えの予測」を基に当社作成

*1 出典:矢野経済研究所, プレスリリース「次世代電池世界市場に関する調査を実施(2019年)」<https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2310>(最終閲覧日:2023年8月23日)

*2 出典:富士経済, プレスリリース「リチウムイオン二次電池の世界市場を調査―2025年市場予測(2020年比)―」<https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=22050&view_type=2>(最終閲覧日:2023年9月12日)

*3 出典:富士経済, プレスリリース「リチウムイオン二次電池材料の世界市場は2025年に12兆円超えの予測」<https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=22089&la=ja>(最終閲覧日:2023年8月23日)

高性能で安全性の高い電池製造ソリューション

電池の性能がEVの売り上げを左右する?

EVの世界では、車載電池の性能がEVの売り上げを左右するともいわれています。一方、リチウムイオン二次電池は液漏れによる発火などの事故も起きており、より安全な電池を求める声が高まっています。

高性能で安全性の高い電池製造が期待される中、安川電機では二次電池製造現場や製造装置の自動化&最適化ソリューションを提案しています。

二次電池向けソリューションカタログはこちら

リチウムイオン電池の製造工程とソリューション

ここからは、現在主流のリチウムイオン電池の製造工程を追いかけながら、安川電機の製品を使ったソリューションをご案内していきましょう。

リチウムイオン電池の製造工程とソリューション

①撹拌工程 —ムラのない均一な撹拌

①撹拌工程 —ムラのない均一な撹拌

まず、活物質溶液などをペースト状にする撹拌の工程です。ここでは撹拌装置が使われます。ここでは、安川インバータGA500、GA700でムラのない均一な撹拌を実現します。モータトルク監視やセンサフィードバックで粘度管理が可能です。さらにリアルタイムデータの活用も容易です。

撹拌工程の詳しいソリューションを見る

②電極工程 —安定した電極箔の加工

②電極工程 —安定した電極箔の加工

次に、金属箔に溶液を塗布し、乾燥させます。圧縮の工程は密度を上げるために行う工程で、プレス装置とプレスロール装置で薄くプレスします。その後、電池の大きさや形に合わせて電極を裁断します。
この工程では、安定した電極箔の加工のために、当社の長年培った搬送技術(Roll to Roll技術)と電源システム技術を活用し、より高品質で省エネルギーな装置の実現をお手伝いします。

電極工程の詳しいソリューションを見る

③セパレータ製造工程 —製造装置の生産性と品質向上

③セパレータ製造工程 —製造装置の生産性と品質向上

正極と負極の間に挟み込むセパレータを製造する工程です。セパレータ製造装置の生産性と品質向上には、コンポーネントの更なる性能アップ、設備機器の運転状況の遠隔監視やデータ活用、しわや傷を生じさせない機能などが必要です。
当社は最新技術を搭載した豊富な製品ラインアップと、それらを取りまとめる高いエンジニアリング力とサポート力で、お客さまのニーズにお応えします。

【当社製品を使った機器構成事例】(成膜機+スリッタ)
セパレータ製造工程ソリューション

④電極層製造工程 —積層・巻回それぞれに高度な制御を実現

④電極層製造工程 —積層・巻回それぞれに高度な制御を実現

電極層製造は、正極と負極を重ねていく工程です。二次電池のセル形状には、円筒型、角型、パウチ型があり、正極と負極の間にセパレータを挟みながら交互に積み重ねる「積層工法」か、フィルムのように巻き取る「巻回工法」によって製造されます。
当社は、それぞれに要求される技術や機能に対応し,高度な制御を実現するACサーボドライブやマシンコントローラなどの最適なコンポーネントを多数保有しています。また,コンポーネントで収集したデータの見える化と活用のソリューションもご提案いたします。

【当社製品を使った電極層製造のシステム構成例】
電極層製造工程ソリューションを見る

⑤タブ形成、切断 —搬送を止めずにタブ成型を実現

⑤タブ形成、切断 —搬送を止めずにタブ成型を実現

変化するタブの位置やサイズに追従する技術と製品で、高精度な作業を実現し、製造工程の課題解決に貢献します。搬送軸の移動量をガルバノスキャナに把握させることで、搬送を止めずにタブ成型を行います。

タブ形成,切断の詳しいソリューションを見る

⑥電池セル組立て —材質や加工、大きさに応じたレーザー溶接を容易に

⑥電池セル組立て —材質や加工、大きさに応じたレーザー溶接を容易に

幾重にも重なった正極と負極、セパレータをケースに入れ、電極を溶接します。電極液をケースの中に注入し、ケースに蓋をします。
ここでは、ガルバノスキャナの豊富なラインアップにより、最終工程に求められる品質と信頼性にお応えするレーザー溶接をご提供します。様々な材質に対応し、スパッタレス、深い溶け込み溶接はもちろん、MOTOMANとの組合せによる溶接も可能です。

電池セル組立ての詳しいソリューションを見る

⑦モジュール・ユニット組立て —高難度でも安定した作業を効率的に

⑦モジュール・ユニット組立て —高難度でも安定した作業を効率的に

モジュールやユニット組立ての自動化に必要なロボットを幅広くラインアップしています。 モジュール・ユニット組立工程で必要とされる様々なアプリケーションでも、難度が高く安定した作業を効率良く実現します。二次電池製造工程における高度な作業の自動化、効率化、重量物の搬送などを実現するソリューションを提供します。
車載にも対応しています。

車載にも対応

安川電機はこれらの製品で、高容量・高密度かつ、より安全な二次電池の製造・開発に貢献していきます。こちらのカタログでは、二次電池製造の各工程に対する詳細なソリューションをご紹介しています。

二次電池製造向けソリューションカタログはこちら

解説のポイント

  1. 充電して繰り返し使える「二次電池」は、スマホやノートPC、EVなどに使用され、生活に欠かせない存在に。中でもリチウムイオン電池は成長が著しく、高密度・高容量の全固体電池の実用化も注目される。
  2. リチウムイオン電池はxEV向けがけん引し、2016年からの約10年で6.5倍にまで拡大する予測。材料市場も5年間で4.1倍になる見込み。
  3. 安川電機では、高容量・高密度かつ、より安全な二次電池の製造・開発に貢献するトータルソリューションを提供している。

お問い合わせフォーム