
機械や設備の初期投資を回収するには様々な方法がありますが、“消費電力”に着目した回収方法はいかがでしょうか?今回は、機械が従来捨ててしまっていたエネルギーを有効活用する「電源回生」という仕組みによって、年間消費電力を抑える方法をご紹介します。電源回生による具体的な節電効果や、省エネ機器の選び方も解説します。
お使いの機械が“発電”していることをご存じですか?
クレーンや自動倉庫、台車などの水平搬送機などの機械はモータで稼働させることがほとんどです。実は、モータで稼働するそれらの機械が“発電”していることをご存じでしょうか。
モータは回るときにはエネルギーを消費しますが、回されるときにはエネルギーを発生(発電)させています。例えばクレーンの場合、積み荷を持ち上げる(巻き上げる)ときはモータにエネルギーが必要です。しかし、降ろす(巻き下げる)ときは積み荷の重さ(重力)でモータが回されるため、逆にエネルギーが発生します。このエネルギーを「回生エネルギー」と呼びます。
回生エネルギーをムダなく有効利用する「電源回生」で節電!
モータから発生した回生エネルギーを電源に戻すことを「電源回生」といいます。従来の方式では、発生した回生エネルギーは制動抵抗器で熱として消費させて(捨てて)いましたが、電源回生方式では、回生エネルギーを電源に戻して再利用します。エネルギーを無駄なく活用でき、更なる節電が実現できます。
例えばクレーンの場合、「電源回生方式」では、下降運転時の回生エネルギーを効率よく電源に戻し、他の装置の電源エネルギーとして有効利用することができます。
この「電源回生」による節電効果を、機械設備の初期投資回収に充ててみませんか?
今使っている機械で「電源回生」をするには?
電源回生をするためには、機械を電源回生できる構成に変更する必要があります。ポイントになるのが、一般的な機械に使われている「制動抵抗器」です。この制動抵抗器を、電源回生が可能な機器に置き換えることで回生エネルギーの有効利用ができるようになります。
この機器は、「電源回生機器」や「電源回生コンバータ」「回生省エネユニット」などと呼ばれています。安川電機では、お客様の機械の構成やニーズに合わせて、3種類の電源回生機器=回生省エネユニットを展開しています。
電源回生の実際の節電効果はどれくらい?
では、実際に省エネ回生ユニットを用いて電源回生をした場合、年間でどれくらいの省エネ効果があるのでしょうか。
ここでは、10tクレーンに、安川電機が展開している回生省エネユニットシリーズの中で最も導入コストの低い、電源回生ユニットR1000を適用した事例をご紹介します。
【事例】
従来このクレーンは一般的な制動抵抗方式で稼働させていましたが、R1000で電源回生方式に変更しました。
クレーン下降運転時の回生エネルギーを電源に戻して1年間稼働すると、年間電気料金は約11万円の節約となり、従来比で54%の省エネを実現しました。R1000の導入費用は約3年で減価償却できる計算になります。
電源回生をやってみようと思ったら?回生省エネユニットの選び方
事例のように、電源回生により確実に年間電気料金は削減できます。ここからは、安川電機の回生省エネユニットを使って電源回生に取り組んでいただく際の、機種の違いや選び方をご紹介します。
① 電源回生ユニットR1000
② 高力率電源回生コンバータ(K5=0)D1000
③ 高力率電源回生(K5=0) マトリクスコンバータU1000
モータ制御にインバータを使っている?使わない?
電源回生したい機械のモータ制御にインバータを使用されている場合は、インバータと組み合わせて使用する①電源回生ユニットR1000か②電源回生コンバータD1000が適しています。
一方、③マトリクスコンバータU1000は、ドライブ機能を内蔵しているためインバータは必要ありません。電源回生を機に電源回生機能を内蔵したインバータを採用し、機械をコンパクト化したい場合にもおすすめです。
導入コストと機能のどちらを優先?
とりあえず電源回生を始めたい、まずは導入コストを抑えたいという場合には、電源回生機能に特化した①電源回生ユニットR1000がシンプルでおすすめです。R1000は、一般的な機械に使われている制動抵抗器を置き換える形で使用します。
一方、②電源回生コンバータD1000は、電源回生機能のほかに電源の力率改善機能、高調波抑制機能があり、電源設備容量の小型化も可能です。電源回生と合わせて、こうした課題も解決されたい場合に適しています。また、複数台のインバータを接続することもできます。D1000はインバータやサーボの電源ユニットとして使用します。
制御盤自体の小型化やシステム簡易化
②電源回生コンバータD1000の持つ機能に加えて、制御盤装置の小型化や主回路配線の簡易化も必要な場合は、③マトリクスコンバータU1000が最適です。
U1000は、モータ回転数を制御するインバータ機能に加え、電源回生機能、力率改善機能、電源高調波抑制機能を 1台で実現するオールインワンタイプのため、省配線と省スペース化が可能です。
電源回生で電気料金を削減し、初期投資を回収しよう!
もともと捨てていたエネルギーを有効活用し、電力料金削減に役立てる電源回生。機械設備の初期投資回収のひとつの方法として、ご検討されてみてはいかがでしょうか。機械の電源回生や工場全体の省エネについて疑問や興味をお持ちの際は、お問い合わせページからぜひお気軽にご相談ください。
また、安川電機の回生省エネユニットシリーズR1000、D1000、U1000のより詳しい機能や仕様につきましては、是非カタログでご覧ください。また、最適な製品が分からない場合には、チャートで簡単に選定できる「安川回生省エネユニットシリーズ 製品選定チャート」が便利です。
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解説のポイント
- クレーンや自動倉庫などの機械でモータが回されるときには「回生エネルギー」が発生している。
- 回生エネルギーを電源に戻して有効活用することを「電源回生」といい、節電効果がある。年間電気料金を削減でき、機械の初期投資回収にも役立つ。
- 安川電機ではお客様の機械の構成やニーズに合わせて、3種類の電源回生機器(回生省エネユニット)を展開している。