
長期休業やメンテナンス等で生産設備や装置を長期間停止すると、再開時にトラブルが発生することがあります。必要な対策を事前に確認・実施し、休み明けに再確認することが重要です。今回は、実際に当社コンタクトセンタに寄せられた事例の中から、休業明けに発生しやすい、ロボットやサーボに関するトラブル事例と対策をご紹介します。
長期停止前の準備が再開後の安定稼働を左右する
長期休業は製造現場にとって、生産設備が長期間停止する特別なタイミングです。設備の電源を長時間遮断することで、再稼働時に思わぬトラブルが発生することがあります。長期停止前の確認と準備は、保全担当者にとってその後の安定稼働を左右する重要な業務だといえるでしょう。
再稼働時にトラブルが発生すると、生産の遅れや品質不良につながりかねません。また、突発的なトラブルへの対応は、予防保全に比べてマンパワー面でもコスト面でも大きな負担がかかります。
こうしたリスクを防ぐためには、長期間停止前に対策を取る、対処法の手順を確認しておくなどの準備が不可欠です。ここからは、実際のトラブル事例と対策・対処法を見ていきましょう。手順書もご紹介します!

- 長期間停止からの再稼働、問題なく稼働するか不安ですよね。休み明けに慌てずスムーズに再開できるよう、しっかりと準備を行っておきましょう!
長期休業後に想定されるトラブル事例と対策集
ロボットトラブル事例①システムデータが破損・消失した

長期休業の間にシステムデータが消失してしまったようだ。
設備復旧までに時間がかかったため、対策を知りたい。
【対策】停止前のシステムデータのバックアップを忘れずに!
システムデータが破損・消失してしまうと、設備復旧までに時間がかかることがあります。そこで、バックアップデータがあると簡単にデータ復元でき、設備復旧までの時間を大幅に短縮できます。特に長期休業などで長時間電源を遮断される場合は、休業前の準備として、事前のバックアップがおすすめです。
システムデータは、各機種に対応した外部記憶デバイスをプログラミングペンダントに挿入してバックアップすることができます。
ロボットトラブル事例②ロボット機内バッテリーが消耗し、エンコーダバッテリ異常のアラームが発生してロボットが動かない

長期間停止後に制御電源を投入したら、エンコーダバッテリ異常の
アラームが表示されロボットが動かなくなっていた。
予防策を知りたい。
【対策】バッテリー消耗メッセージの確認と、ロボット機内バッテリーの交換を行う
ロボット機内バッテリーが消耗するとロボット原点位置データが消失してしまい、教示位置通りにロボットが動かなくなります。
バッテリー消耗時に、プログラミングペンダントの画面に表示されるメッセージを見逃さず、バッテリー交換を行いましょう。また、定期的な交換を計画することをおすすめします。
●ロボット機内バッテリー消耗時のメッセージ表示:「エンコーダバッテリが消耗しています *軸表示*」
ロボットトラブル事例③メモリバッテリーが消耗し、システムデータが破損した

メモリバッテリーが消耗しており、システムデータが破損してしまった…。
予防策はありますか?
【対策】バッテリー消耗メッセージの確認とバッテリー交換を行う
メモリバッテリーが消耗すると、システムデータが破損・消失する恐れがあります。バッテリー消耗時にプログラミングペンダントの画面に表示されるメッセージを見逃さず、バッテリー交換を行いましょう。ロボット機内バッテリーと併せて、定期的な交換計画を立てることも大切です。
●メモリバッテリー消耗時のメッセージ表示:「メモリバッテリが消耗しています」
ロボットトラブル事例④「位置確認を行ってください」と表示された

プログラミングペンダントに「位置確認を行ってください」
「位置確認が行われておりません」と表示され、
ロボットが動かなくなった。対処方法を知りたい。
【対応】プログラミングペンダントにて位置確認操作を行う
長期間停止後に再開した際、「位置確認を行ってください」と表示されたら、プログラミングペンダントで位置確認操作を行いましょう。
最後にコントローラ電源が遮断された時のロボット位置と、コントローラ電源が投入された時のロボット位置に一定量の差がある場合、位置確認操作が必要になります。
例えば、ロボットが高速動作中に瞬間的に停電が起きた場合などは、ロボットが急停止することで軸がわずかに惰走することがあり、復電後に位置確認操作を要求されることがあります。
●メッセージ表示:「位置確認を行ってください」
サーボトラブル事例:絶対値エンコーダ用のバッテリーが消耗し、絶対値データ(座標)を消失した

長期休業の間に、絶対値エンコーダ用のバッテリーが消耗し、
絶対値データ(座標)を消失してしまいました。
予防策やアラームの解除方法を教えてください。
【対策】停止前にバッテリーの電圧を確認し、バッテリーの交換を行う
長期休業後にバッテリーが消耗し、再稼働時に原点設定に困らないよう、事前にバッテリーの交換を行いましょう。
もしバッテリーの電圧が低下し絶対値データが消去されると、アラームA.810が発生します。バッテリーを交換した場合は絶対値エンコーダを初期化し、上位コントローラ側で原点設定が必要です。また、機械原点位置の確認および原点設定の操作につきましては、機械メーカーにお問い合わせいただく必要があります。
休業明けの立上げの際こうした作業が発生しないよう、休業前にバッテリー交換作業を済ませておくと安心です。
・Σ-7シリーズ 絶対値エンコーダのセットアップ手順(SigmaWin+ Ver7)

■バッテリーメンテナンスの負担を削減するには?
バッテリーのメンテナンスの負担そのものを削減する方法として、バッテリー交換が不要なバッテリーレスエンコーダ搭載サーボモータへの置換えもおすすめです。
特に、長期間の未通電やクリーンルーム、狭いスペースなど、メンテナンスが難しい環境において、バッテリーの消耗を心配する必要がありません。製品の詳細や置換えのご相談は、最寄りの拡販パートナ(販売代理店)まで、お気軽にお問い合わせください。
▶最寄りの拡販パートナを探す
故障復旧時や予防保全に役立つ資料を公開中!
長期休業後の設備再稼働は、思わぬトラブルが起きやすいタイミングです。事前のシステムデータのバックアップ、バッテリー交換、手順確認などの準備を行い、休み明けのスムーズな立上げと安定稼働を目指しましょう!
今回ご紹介した対策以外にも、e-メカサイトでは、故障時や故障する前の予防保全に役立つ故障復旧サポート資料を拡充しています。ぜひご活用ください。
※資料の閲覧には、e-メカ会員登録/ログインが必要です。
また、e-メカサイトでは当社のコンタクトセンタに寄せられたお問い合わせについて、専門的な知識と技術を持つエキスパートによる回答を「よくあるご質問」として公開しています。スマホでも閲覧でき、手元にPCやマニュアルがない場合でも、いつでもご利用いただけます。こちらもぜひご覧ください。

解説のポイント
- 長期休業後の設備再稼働は、思わぬトラブルが起きやすいタイミング。連休前の対策や対処の手順確認といった準備が不可欠。
- 事前のシステムデータのバックアップ、バッテリー交換、手順確認などの準備が、スムーズな立上げと安定稼働につながる。
- 安川電機では、故障時や故障する前の予防保全に役立つ故障復旧サポート資料を公開している。