
自動車の電動化(EV化やPHEV化)が加速し、自動車産業はまさに大変革の時を迎えていますね。特に、航続距離を延ばすため、バッテリーの大容量化・重量化が進んでいます。生産現場ではバッテリーの大型化に伴い、重量物搬送が課題になっているようです。今回は、EVバッテリー搬送の課題と、それらを解決する1t可搬ロボットMOTOMAN-ME1000についてご紹介します。
EVの市場動向 世界販売に占めるEV比率は約10%に
電気自動車(EV)の世界市場は急速に拡大しています。環境問題への対応から各国の排出ガス規制が厳しくなり、自動車の電動化(EV化やPHEV化など)が進んでいます。
世界最大のEV市場である中国、欧州(イギリス・ドイツ・フランス)、米国では自動車メーカーのEVへの投資が強化され、EV販売比率の推移は右肩上がりです。また、東南アジアではタイでの販売台数が急激に伸びており、2024年の世界販売に占めるEV比率は約10%に達しています。
日本のEV販売比率は2%と低い水準にあるものの、徐々に普及が拡大しています。EV・PHEVの車種数は、2018年から2023年の5年間で、27車種から132車種と約5倍に増加。 国は、EVやPHEVなどを新車購入する際に利用できる「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」を整備し、普及を後押ししています。
大容量化が進むEVバッテリー 生産現場では搬送装置の消費エネルギー量やスペースが課題に
EVの普及のため、充電頻度を減らし、航続距離を延長することが求められています。そこで、一度の充電でより多く電力を蓄え、より長い距離を走行できるよう、バッテリーの大容量化が進んでいるのです。
大容量化に伴い、バッテリーの重量も大きくなっています。そのため生産現場では、重量物を搬送する装置も大型化し、消費エネルギーの増大や設置スペースの拡大が課題になっています。
大容量化によりバッテリー質量は最大で700kg超と増加し、モジュール一括移載やバッテリーを車載する工程など、700kgのワークに対応するため、ハンドも含めた可搬質量は1000kgが求められます。また、EVバッテリーは安全性の観点から車体床面への搭載が一般的で、組込みには低い位置で搬送・位置決めするライン構成が必要です。
そのため搬送には垂直多関節ロボットが使用されることが一般的でしたが、バッテリーの重量化に伴い、ロボットサイズやエネルギー消費量が大きくなることが課題でした。
1t可搬のスカラロボットMOTOMAN-ME1000で、EVバッテリー搬送の課題を解決
こうした背景から安川電機では、EVバッテリー搬送に最適な1t可搬ロボット「MOTOMAN-ME1000」を開発しました。重量物の水平搬送に特化し、ロボットの基本構造をスカラ型にすることで、モータの小型化が可能となり、省スペース・省エネを実現しています。
バッテリーの重量が600kgを超えるケースもある中、MOTOMAN-ME1000はワークとハンドの重量を合わせて1tまで可搬できます。
また、重量物搬送用の垂直多関節ロボットでは、設置・動作スペースが大きくなることが課題でしたが、MOTOMAN-ME1000は、設備との接近性を高めた省スペースな設備レイアウトを実現しています。同一可搬クラスで最小クラスの設置面積です。さらに、工場の梁や床への負荷を軽減できるように、同一可搬帯のロボットの中で最軽量です。
そして、MOTOMAN-ME1000は、省エネを強く意識した製品です。1t可搬でありながら、当社225kg可搬ロボットと同等の消費電力で同一の動作が可能であり、エネルギー効率に優れています。
1000kgのワークを搬送した場合の消費電力量を比較すると、垂直多関節ロボットのMOTOMAN-GP225に比べ、MOTOMAN-ME1000は消費電力量を約26%にまで削減できます。また、電気代やCO2排出量も約74%削減でき、カーボンニュートラルに貢献します。

MOTOMAN-ME1000は、2024年省エネ大賞を受賞しました!
MOTOMAN-ME1000は、2024年省エネ大賞において、最上位の「経済産業大臣賞」(製品・ビジネスモデル部門)を受賞しました。
ロボット質量あたりの可搬能力を従来製品の1.6倍にするとともに、モータでの消費電力を約45%削減した点などが評価されました。
最後に、安全に搬送するための機能です。昇降機構の根元部には、2軸の補正軸を搭載。周辺機器やワークの設置誤差を考慮して搬送でき、ワークの落下を防ぎます。
レイアウト例:大型バッテリーの移載、自動車への搭載に最適
MOTOMAN-ME1000は、大型バッテリーの棚への移載や、自動車への搭載(車載)に最適です。また、バッテリー以外にも、大型パレットの搬送、大型ジグの搬送、物流関連工程など、様々な重量物搬送に適用できます。
以下の動画では、バッテリー移載の実際の動きをご覧いただけます。(ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2024出展時)
バッテリー搬送工程を再現し、MOTOMAN-ME1000がAMRからバッテリーを受け取り、完成品棚(ワーク置台)へ棚入れします。大きな重量物の搬送に対して、コンパクトで経済的なシステムを構築できることが分かります。
省エネ大賞受賞のMOTOMAN-ME1000で、カーボンニュートラルに対応した生産ラインを構築
MOTOMAN-ME1000は、大容量化、重量化するバッテリーの搬送工程において、カーボンニュートラルも意識したラインの構築に貢献します。安川電機では、このほかにも多くの搬送用ロボットのソリューションがあります。お問い合わせページから、ぜひお気軽にご相談ください。

解説のポイント
- EVは、航続距離を延ばすため、バッテリーの大容量化・重量化が進んでいる。
- 生産現場ではバッテリーの大型化に伴い、重量物を搬送するロボットのサイズや設置スペース、消費エネルギー量などが課題になっている。
- 安川電機では、重量物搬送に特化した1t可搬のスカラロボットを開発。省エネ・省スペースな製品で、コンパクトで経済的なシステムを構築できる。