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豆大福が大好きな通称"豆大福先生"が
安川電機の製品にまつわる疑問や業界の
トレンドをわかりやすく解説します。

お使いの三相パワーコンディショナは
「新型能動方式」に対応していますか?
対応時期や製品選定のポイント

2024.4.23

豆大福先生への質問 豆大福先生への質問

三相パワーコンディショナを低圧連系で使用しています。
FIT開始時に設置してから10年以上が経過し、設備の更新を検討中です。
パワーコンディショナ置換えの際に注意すべき点や、
選定のポイントを教えてください。


豆大福先生

2012年に開始された「固定価格買取制度(FIT)」から12年。太陽光発電は導入が進む一方ですが、普及に伴って電力会社の系統(配電網)の安全対策が課題になっています。2024年4月以降、三相パワーコンディショナを低圧連系する場合、系統停電時に瞬時に運転を停止する「新型能動方式」に対応していることが必須となりました。また、太陽光発電の普及は、照明がちらつくなどの「電圧フリッカ」の問題も顕在化させています。今回は、新型能動方式やフリッカ対策に対応すべきタイミングや、パワーコンディショナの選定ポイントについて解説します。


太陽光発電の「低圧連系」「高圧連系」とは?

太陽光発電は、システムの発電容量の規模に基づいて「低圧連系」「高圧連系」「特別高圧連系」の3種類に分類されます。今回解説するのは、パワーコンディショナを「低圧連系」する場合の対応です。

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●低圧連系:発電容量が50kW未満の比較的小規模な場合。家庭用や店舗屋上、集合住宅など向け

●高圧連系:発電容量が50kW以上2MW未満の大規模な場合。工業用施設や大規模な商業施設、小規模メガソーラーなど向け

●特別高圧連系:発電出力が非常に大規模(2MW以上)な場合。電力会社や大規模な産業用電力、大規模メガソーラーなど向け

低圧連系のパワーコンディショナに求められる「新型能動方式」とは?

パワーコンディショナには、安全のため、系統の停電を検出して運転を停止させる「単独運転防止機能」という機能が搭載されています。従来は各メーカーが独自に開発し搭載してきました(以下、従来型能動方式)が、2024年4月から、低圧連系が認められるパワーコンディショナは、三相、単相を問わず、「ステップ注入付き周波数フィードバック方式」という新型の能動方式のみとなりました。(以下、新型能動方式)

単独運転検出機能の従来型能動方式と新型能動方式の違い

単独運転検出機能の従来型能動方式と新型能動方式の違いは、系統の停電を見つける方式および停電検出の早さ、ならびに他の方式との干渉の有無にあります。

●従来型能動方式
周波数シフト方式や無効電力変動方式など、メーカー各社が独自に開発・搭載している方式。系統の停電を検知してから運転停止までに0.5~1秒かかる。また、従来型能動方式のパワーコンディショナ同士での干渉により停電検出機能が適切に動作しない可能性があるため、確認試験を求められることがある。

●ステップ注入付き周波数フィードバック方式(新型能動方式)
NEDOのプロジェクトで規格化された方式。停電発生時に瞬時に停止できる。「周波数フィードバック」機能と「ステップ注入」機能により、停電発生時に高速に停止することができる。他のパワーコンディショナとの干渉もないため、確認試験を求められることがない。

新型能動方式に一元化される背景

この動きの背景には、太陽光発電の普及、パワーコンディショナの設置台数や容量の増加があります。太陽光発電の導入が増えたことで、従来型の方式では系統停電時の安全を確保できない可能性が出てきたため、瞬時停止できる新しい方式が求められるようになりました。

電圧フリッカへの対策も必要

電圧が繰返し変化し、照明がちらつくなどの影響が発生する「電圧フリッカ」の対策も必要です。太陽光発電の導入が進んだことにより、全国的に電圧フリッカ問題が顕在化しています。日本電気工業会でパワーコンディショナを対象とした対策が標準化されており、2024年4月時点での最新の対策は、「フリッカ対策STEP3.2」と呼ばれています。現在では、電力会社に低圧連系での系統連系申請をするときは、新型能動方式とともに、このフリッカ対策も搭載していることが求められます。

新型能動方式に対応すべきタイミングは、新設時と置換え時!

2024年4月以降に低圧連系での系統連系を開始する場合は、この新型能動方式とフリッカ対策の両方に対応している必要があります。しかし、FIT開始時の2012年頃はこの方式に対応しているパワーコンディショナが少なく、フリッカ対策の要請も強くなかったため、今でも従来型能動方式やフリッカ対策の十分でない製品が使用されているケースは多くあります。

新型能動方式に対応したパワーコンディショナを採用すべきタイミングは以下の2つです。
①設備の新設時
②故障等による置換え時

低圧連系で現在お使いのパワーコンディショナが新型能動方式に対応していなくても、故障するなどして交換が必要となった場合には、電力会社に系統連系申請する際に、新型能動方式とフリッカ対策の両方に対応した製品を採用することが前提となります。

そのため、突然の故障など、とっさの時に使用するパワーコンディショナが新型能動方式とフリッカ対策に対応しているか、あらかじめしっかりと確認して置換えに備えましょう。

パワーコンディショナ選定のポイントと安川電機製品の対応方針

ここまでの説明をまとめると、今後パワーコンディショナを選定する際は、以下の2点を満たしている必要があります。

選定のポイント

①新型能動方式に対応していること
②フリッカ対策STEP3.2に対応していること

安川電機製 低圧連系向けの三相パワーコンディショナは対応済み

当社製低圧連系向け三相パワーコンディショナ「Enewell-SOL P2H(9.9 kW 200 V級 三相絶縁型)」は、「新型能動方式」「フリッカ対策STEP3.2」のどちらも対応完了しています。
また、新型能動方式に対応したことで、従来必要であった能動同期配線や、干渉の有無の確認が不要となるなど、より使いやすい製品となりました。
(機種:CEPT-P2HA29P9□ Dスペック(PRG:1540)以降)

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FIT開始時に設置されたパワーコンディショナは、既にメーカーが撤退しているケースもあります。今後の置換えについてご不安やお困りごとがある際には、ぜひ当社へご相談ください。

選定の際、「絶縁トランス」の有無にも注意!

  1. 三相パワーコンディショナを低圧連系で使用する際、新型能動方式への対応のほかにも、「絶縁トランス」が必要です。
  2. 連系する系統の接地方式に適合していないパワーコンディショナを連系した場合、漏洩電流により、保安上問題となる場合がありますが、この問題の発生を防止するため、以下のいずれかの対応が求められます。
  3. ・三相パワーコンディショナの交流出力側に、絶縁トランスを設置する。(別途設置)
  4. ・高周波絶縁トランス内蔵型の三相パワーコンディショナを選定する。
  1. 新型能動方式に対応した当社の「Enewell-SOL P2H(9.9 kW 200 V級 三相絶縁型)」は、高周波絶縁トランスを内蔵しています。外部の絶縁トランスを設置することなく接続できるため、システム全体でのコストカットにつながるというメリットがあります。
    高周波トランス絶縁方式の説明やメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。

パワーコンディショナの置換えをご検討中の方へ

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2024年4月以降、低圧連系での設備の新設や置換えをする場合は、新型能動方式とフリッカ対策STEP3.2に対応したパワーコンディショナを採用する必要があります。

低圧連系で使用している三相パワーコンディショナの置換え、特にFIT設備の更新をご検討中の方は、こちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。最適なパワーコンディショナをご提案させていただきます。

解説のポイント

  1. 太陽光発電用三相パワーコンディショナを低圧連系する場合は、「ステップ注入付き周波数フィードバック方式」および「フリッカ対策STEP3.2」への対応が必要
  2. 新型能動方式への対応タイミングは設備新設時と置換え時。FIT開始時に設置したパワーコンディショナは未対応の場合があるため要確認
  3. 安川電機の低圧連系向け三相パワーコンディショナ「Enewell-SOL P2H(9.9 kW 200 V級 三相絶縁型)」は、「新型能動方式」「フリッカ対策STEP3.2」のどちらも対応完了している

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