
約2年ごとに行わなければならないエンコーダのバッテリ交換。コストも人手もかかって大変ですよね。今回は、メンテナンスフリーが叶う「バッテリレス絶対値エンコーダ搭載サーボモータ」の仕組みやメリットについて学んでいきましょう。
バッテリ交換や在庫管理…アブソリュート方式エンコーダの弱点
エンコーダはモータが回転したり移動したりする方向や角度などの位置情報を検出する役割を持っています。そして、その位置情報を電源OFF時にも記憶しているかどうかで、「インクリメンタル方式」と「アブソリュート方式」の二つに分かれます。
それぞれの特長を比較してみると…
「インクリメンタル方式」は、電源を切ると位置情報が消えます。位置情報を保持しないのでバッテリを使いませんが、その代わり、電源を切ってモータを停止し運転を再開するときに、原点復帰作業が必要になります。そのためインクリメント方式は、位置情報の保持を特に必要としないような簡易な工作機械などに使われています。
一方アブソリュート方式は、1回転の位置情報を絶対値スリットで検出し、多回転の位置情報をバックアップしています。運転再開時の原点復帰作業は必要ありませんが、多回転の位置情報を保持するためにバッテリでエンコーダに電気を供給し続ける必要があります。精密な動作が求められる半導体関連装置や自動車生産機械では圧倒的にアブソが使われていますね。
こうして比較してみるとアブソリュート方式のほうがメリットは多いものの、バッテリ交換や在庫管理の面倒さなど管理の部分でネックになっていました。
アブソの弱点克服 バッテリレス絶対値エンコーダは自己発電する!
そこで今回取り上げたいのが、バッテリのメンテナンスが不要になる「バッテリレス絶対値エンコーダ搭載サーボモータ」です。
各社がさまざまな仕組みの絶対値エンコーダを開発ししのぎを削る中、安川電機では磁石とコイルを使った技術を採用しています。
バッテリレス絶対値エンコーダの仕組みは、モータが回転するときに磁石が一緒に回転し自己発電することによって、多回転の位置情報データを出力し不揮発性メモリに記録するというもの。不揮発性メモリは電源供給しなくてもメモリが保持できるため、未通電状態が起きても原点復帰の作業は不要です。

わずかな回転でも位置情報を保持できるんですね。定期的なバッテリ交換の手間もかからず、アブソリュート方式の弱点がなくなったといえるでしょう。
バッテリレスサーボモータを使うと生産現場はどう変わる?
最後に、このバッテリレス絶対値エンコーダ搭載サーボモータを導入した際のメリットをまとめてみましょう。
- 交換のたびに発生するバッテリの廃棄コストがかからない
- バッテリユニット代やバッテリ保守費用が不要になり、トータルコスト削減に
- バッテリ/バッテリユニットを廃止でき、配線が入り組みがちな制御盤内で省スペースになる
- バッテリ交換がしづらいクリーンルーム内や危険な環境でも使いやすい
- 海外輸送が必要な装置、長期間の未通電状態でも再セットアップが簡単
Σ-7シリーズ回転式モータの全タイプでラインアップしており、性能も変わりません。サーボパックやケーブルはそのままモータ交換だけで置き換えが可能なので、ご検討いただきやすいのではないでしょうか。

解説のポイント
1.アブソリュート方式の弱点は、バッテリ交換・在庫管理などのコストや面倒な手間。
2.安川電機のバッテリレスサーボモータは自己発電で位置情報を記憶するためバッテリが不要。
3.交換、在庫管理のメンテナンスから解放。コストダウン・省スペース化も叶う。