2006年11月28日号

豆大福先生に聞いてみようよ!
 

豆大福先生はモーションコントロールスクール講師。
ユーザさんに対しての講習はもちろん、新入社員の研修も担当している。

行橋くん、入間くん、竹芝さんは、数年前の入社当時に研修を受けた新人営業さん。
彼らは疑問があると、今でも豆大福先生を頼ってくる…

 

 
■第2話 「負荷の慣性モーメントが大きいとサーボは使えないの?」
 
入間君 ん~、困ったなぁ
豆大福先生 入間君じゃないか、久しぶりだね
入間君 あ!豆大福先生!お久しぶりです!
豆大福先生 そんなに困った顔をしてどうしたんだい?
入間君

お客様からサーボモータの容量選定を頼まれて、SigmaJunmaSize+で選定してみたんですが、こんなメッセージが出てしまい困ってるんです。

負荷の慣性モーメントが大きいと、サーボは適用できないんでしょうか?

豆大福先生 桁違いに大幅にオーバーした負荷慣性モーメント比(負荷/回転子)の負荷への適用は、お勧めできないね。
慣性モーメントが大きい負荷へサーボを適用するには、制御性・応答性、回生処理、DB(ダイナミックブレーキ)停止の3点から、詳細な検討が必要なんだよ。
ところで、今回のお客様の場合、負荷の慣性モーメントはモータの慣性モーメントの何倍なのかな?
それと、モータの形式は何かな?
入間君 モータは、Σ-IIISGMAS-01ACA21で、負荷慣性モーメントはモータ慣性モーメントの40倍です。
豆大福先生 その程度だったら、高度な制御性・応答性を求めなければ、回生処理、DB停止の詳細検討をした上で、適用可能な範囲だよ。
高頻度の加減速や精密な位置決めは必要なのかな?
入間君 今回は、いらないです。
豆大福先生 それだったら、回生処理とDB停止の詳細検討を行ってOKであれば適用可能だね。
入間君 高頻度の加減速や精密な位置決めが必要な場合はどうするんですか?
豆大福先生 その場合は、SigmaJunmaSize+のモータ選択画面で、負荷慣性モーメントの警告文が表示されないモータを選択することになるね。
入間君 高度な制御性・応答性を求めない場合の回生処理とDB停止の詳細検討はどうやるんですか?
豆大福先生 回生処理の詳細検討は、SigmaJunmaSize+がやってくれるよ。
計算結果の外部回生抵抗を準備すればOKだ。
入間君 簡単ですね。
DB停止のほうは、どのように検討するんですか?
豆大福先生 こちらは、エネルギー計算が要るのでちょっと面倒なんだよ。でも、高校の物理で習った運動エネルギーの式が基本だから、考え方は簡単だよ。
運動エネルギーEkが次式で表されることは知ってるよね。
  (1)
入間君 はい、知ってます。
mが質量で、vが速度だったと思います。
豆大福先生 正解!
それじゃあ、回転の運動エネルギーの式は憶えているかい?
入間君 確か、直線系の式の質量mが慣性モーメントJになり、速度vが回転速度ωになるんだったと思います。
豆大福先生 そのとおり! よく憶えていたね。
つまり、次式だね。
  (2)
  DB減速停止時にはサーボパックに内蔵されたDB抵抗器がこのエネルギーを消費して、モータを停止させるんだ。
DB抵抗器が処理できる最大エネルギー以内であれば、DB回路は壊れないんだ。
入間君 Jが大きくてもωが小さければEkは小さいということですね。
ところで、DB抵抗器が処理できる最大エネルギー以内かどうかはどうやって判断すればいいのですか?
豆大福先生 サーボパックは、許容負荷慣性モーメント目いっぱいの負荷が最高回転速度で回っている状態を最大エネルギーと想定しているんだ。だからこの値と比較すればいいんだ。
  (3)
 
負荷慣性モーメント比… JL/JM
所要最大回転速度(使用回転速度)… NMAX
許容負荷慣性モーメント比… RJLM
モータ最高回転速度… NMMAX
入間君 つまり、(3)式を満たしていれば、DB減速停止を行ってもDB回路を壊す心配はないんですね。
豆大福先生 通常の使用状態であればそうだよ。だけど、操作ミスかなんかで、モータが暴走して最高回転速度で回るような事態になったら、DB減速停止時にDB回路が故障してもやむを得ないね。
入間君 (3)式を満足しない場合はどうなるんですか?
豆大福先生 その場合はDB停止を使用しないようにすればモータを回すことは可能だ。
ただ、停電などで、制御電源もオフになった場合は、サーボパックで減速停止方法を制御できなくなるので、DB抵抗器に許容量を越えるエネルギーが流れ込み、故障する可能性があることを覚えておいて欲しい。
入間君 ところで、回生とDBはどちらも抵抗器でエネルギーを消費しているみたいですが、どう違うんですか?
豆大福先生 なかなかいい質問だ。サーボとインバータで、同じ言葉を違う意味で使っている場合があるから、ここで一回整理しておこう。
回生は、通常の運転で、減速時に負荷のエネルギーがモータを通じてサーボパックに戻ってくることを言うんだ。戻ってきたエネルギーは、まず主回路の電解コンデンサに電気エネルギの形で貯蔵される。
コンデンサに蓄えられるエネルギーはどうやって求めるか憶えているかい?
入間君 確か、次の式だったと思います。
 

(4)

 
コンデンサ容量[F] C
電圧[V] V
豆大福先生 さすがだね。
回生の場合は、まずこのコンデンサの電圧を上げてエネルギーを吸収するんだ。だけどコンデンサの電圧は無制限には上げられないから、耐圧を超える前に抵抗器でエネルギーを消費させるんだ。
この抵抗器をサーボでは回生抵抗器と呼んでいる。インバータでは同じ働きをする抵抗器を制動抵抗器と呼んでいるよ。
入間君 インバータは頻繁な加減速があまり無いから、こういう呼び方なんですかね?
豆大福先生 きっとそうだと思うよ。
ところで、(4)式を見て何か気が付かないかい?
入間君 あれっ!さっきの運動エネルギーの式と同じ形だ!
一粒で3回おいしいかな?
豆大福先生 1つ覚えれば、直線系、回転系の運動エネルギーも電気エネルギーも、みんな同じ形だね。
入間君 DBはどうですか?
豆大福先生 サーボでDBと言うと、ダイナミックブレーキのことだよね。これは、オーバートラベルやアラーム発生時の停止方法で、サーボモータの端子を短絡させて停止させる方法だ。
この時に抵抗になるのは、DB抵抗器の他にモータ自身の巻線抵抗があるんだ。
運動エネルギーを全てDB抵抗器で消費する訳ではないんだよ。それと、DBの場合は一旦コンデンサに蓄えることをしないんだね。
入間君 インバータのDBは違うんですか?
豆大福先生 インバータでは直流制動(ダイレクトカレント ブレーキ)のことをDBと呼んでいるね。
これは、汎用誘導電動機を回す文化と、特殊なサーボモータを回す文化が異なっているからなんだろうね。
入間君 同じ会社の同じモータなのに、何か変ですね。
豆大福先生 まぁそう言わんでくれ。
でも これで、お客様からの容量選定に回答することができるかな?
入間君 はい。今日はいろいろと教えていただきありがとうございました。
豆大福先生

さて、一件落着したところで、今日も大福を食べるとするかな…

 

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