
高齢化の進展と介護者の人手不足が深刻化する日本。それによって医療、介護、福祉機器のニーズが急速に高まり、安川電機も製品の開発に取り組んでいます。今回はこれらの機器の開発・導入にまつわる国の動きや介護現場の課題などについて考えてみましょう。
2.6人に1人が65歳以上の高齢者に・・・介護者の負担低減が急務
日本では、2025年には65歳以上の人口が30%に達するといわれています。総人口が減り続ける中で高齢化率は上昇し続け、2065年には国民の2.6人に1人が65歳以上の高齢者となる、超高齢社会が到来すると予想されています。
日本の高齢化の推移と将来推計※平成30年版高齢社会白書(内閣府)を基に当社作成
医療・介護・福祉機器への注目が集まっている大きな理由のひとつは、超高齢社会を前に深刻化している介護業界の人手不足です。2025年時点の介護職員の需給を推計すると、介護職員は38万人不足する見込みといわれています。
人手不足に加え、介護業界はハードワークであることも課題で、介護者の単純作業や重労働、精神的な負担の低減にもつながる機器のニーズが増えているのです。
また、ロボット技術の進歩も理由のひとつです。失われた身体機能を補う機器が実用的なものとなってきたことで、医療、介護、福祉の様々な場面で期待が高まっています。
機器の開発・導入が国の成長戦略のひとつに
こうした状況の中で、日本では国の成長戦略のひとつとして開発や普及を後押ししています。政府が打ち出した「未来投資戦略2018」の中でも、「医療・介護現場の生産性向上」などをキーワードに挙げ、その中で現場ニーズを踏まえたロボット・センサ、AIなどの開発・導入を推進するとしています。
開発費や製品価格が高いという課題に対しては、国や自治体がロボット介護機器の開発・実用化を支援する事業や助成金制度を実施しています。
一方で、「人の手のぬくもりを感じる介護が良い介護」という考え方や、機器を使った介護に抵抗を持つ人も少なくないのが現状です。介護業界や利用者の心理的なハードルを取り除くことも普及のカギといえるでしょう。
技術を活かして 安川電機も医療、介護、福祉機器を製品化
国を挙げての開発、導入が急がれる中、安川電機でも医療・介護・福祉機器を既に製品化しています。
2018年には、足関節の運動機能の低下により歩行が困難な方が歩行練習を行うときに、足関節の底屈・背屈をアシストする「足首アシスト装置 CoCoroe AAD」を製品化しました。
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「足首アシスト装置 CoCoroe AAD」は安川電機が得意とするモータ制御の技術を活かした装置です。対象者の身体機能・歩行状態に合わせて、歩行周期、底屈・背屈角度、アシスト力などの設定が可能で、対象者は歩行時の足関節の動きを体感、理解することができます。
また、介助者が手技では直接介入できなかった足関節へのアプローチが可能になり、効率的な歩行練習をサポートできるようになることも特長です。※本製品は法人向けです。
安川電機ではこれまでに、理学療法士が行う下肢のリハビリ動作の一部を再現できる「下肢用リハビリ装置LR2」や、上肢の自動運動をサポートし反復訓練を行う「上肢リハビリ装置 CoCoroe AR2」など、安川電機のロボットやモータ技術を活用した機器や装置を製品化してきました。
また、「もう一度歩きたい」という声に応える機器として注目を浴びている「脊髄損傷者用歩行アシスト装置 ReWalk」は、脊髄を損傷したことによって下半身が動かなくなり車いす生活を余儀なくされた方の歩行をアシストする装置です。ReWalk Robotics社(イスラエル)が開発し、国内では安川電機が販売権を得ています。
なぜ安川電機が医療・福祉分野に?
安川電機は、これまで産業自動化分野で培ったロボット技術やモーションコントロール技術を医療・福祉分野に応用し、アライアンスや産学官連携等オープンイノベーションを活用し、先進的な医療・福祉機器を創造することを目指しています。
そして、これまで産業自動化分野で培ったメカトロニクス技術と人間の能力を融合し、生活の質を高める機器を「ヒューマトロニクス機器」と位置づけ、販売する医療・福祉機器市場に向けた機器・コンポーネントを「CoCoroe(ココロエ)」ブランドとして展開しています。

解説のポイント
- 超高齢化社会の到来を前に、介護者の負担を低減する機器のニーズが高まっている
- 国や自治体も開発・導入を支援。利用者の心理的ハードルを下げることもカギに
- 安川電機では産業自動化分野で培った技術を活かし、医療・福祉機器を開発している