安川電機 医療・福祉機器情報サイト CoCoroe(ココロエ)

株式会社 安川電機

医療、リハビリテーションの
現状と今後の見通し

1. 高齢化社会

高齢化社会イメージ図

 人生100年時代という言葉を耳にするようになってきましたが、統計データでは現在の10歳の2人に1人が100歳まで生きることが出来る時代が来ると言われています※1。ヒトの寿命が右肩上がりに延びていく中で私たちの住む日本は、2025年団塊の世代が後期高齢者である75歳を迎え、国民の2.5人に1人が高齢者と定義される65歳以上になります※2。これは世界一位の割合であり、有史以来どこの国も、もちろん誰もまだ経験をしたことのないスケールの超高齢社会を迎えるということです。前例のない中でさまざまな変化や対応が求められています。

 そして日本の特有の課題としては二度のベビーブームの影響があります。その前後の世代と比較して突出して人数が多い団塊の世代が居ますが、この世代がまとまって同時期に医療や介護を受ける側に回ると、社会保障費の大幅な増大やサポートする人手の不足が生じる可能性が高いといわれており、社会保障制度自体の持続が危ぶまれている状況を2025年問題と呼びます。これらの社会課題の解決策の一つとして地域包括ケアシステムが提唱されました。私たち、安川電機も時代の背景をうけてCoCoroeブランドを展開し、人口減少や高齢化での社会課題解決の役割を担えるロボットの開発など技術による貢献を進めています。

  1. 1)『The Human Mortality Database』https://www.mortality.org/またはリンダグラットン著『LIFE SHIFT』
  2. 2)平成24年版高齢社会白書.第1章第1節1(2)将来推計人口でみる50年後の日本

2. 脳卒中後のリハの割合

脳卒中後のリハの割合イメージ図

 新しい薬剤や新しい治療法の発展により脳卒中後の生存率や社会復帰率は昔と比較して改善してきている傾向があります※1。その中で、リハビリについては“入院早期に医師が診察し理学療法、作業療法を開始すると、若年者の64.2%、高齢者の42.2%は歩行が自立し、若年者の60.2%、高齢者の52.8%は地域生活へ復帰した”と報告※2されています。また“積極的な指導は入院期間を短縮し、その後の死亡率や介助度を低くする効果がある”とも報告※2されており、近年のスタンダードとしてリハビリを早期からの開始と積極的な提供量で実施することがそれぞれ推奨されています。そうすることで在宅での介護量の低下だけでなく、社会復帰も期待できるからです。

 退院後の生活として脳血管疾患の治療などで通院している患者数は約118 万人と推計されており、そのうち約14%(17万人)が就労世代(20~64歳)といわれています※3。その中でリハビリ期限の設定によるリハビリ難民問題や、職場復帰やより良いライフスタイルの実現とのギャップなど改善すべき社会課題※4がまだまだあります。現代社会では、世界各地でよりよい社会を目指して日々技術の進歩が起こっております。この流れは国内においても同様であり、あらゆる社会課題の解決を目指し、医療・介護保険の外からのサービスと融合する新たなソリューションが強く望まれていると私たちは考えています。

  1. 1)山口武典(2002) 1.脳卒中
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/91/8/91_8_2329/_pdf
  2. 2)佐鹿博信,高岡徹,齋藤薫,他.脳卒中高度専門病院における急性期から安定期までの脳卒中リハビリテーションによる帰結 連続症例1,189例の調査.総合リハビリテーション 2004;32:775-786
  3. 3)厚生労働省. 平成26年患者調査:図1 性別・年齢階級別 脳血管疾患患者数(推計)
  4. 4)脳卒中患者の保険外リハビリに関する医師調査結果報告書
    https://www.qlife.co.jp/news/170912qlife_research.pdf

3. 医療や介護人材の不足

医療や介護人材の不足イメージ図

 実は日本の医療人材は人口比でみると先進他国(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの先進国のこと。以下、G7)と比べて現状はそこまで少なくはありません。しかし、人材を病院や施設ごとに換算しG7間で比較すると、医療人材は少ないという結果になります※1。つまり、日本は医療人材の総数としては他国並みですが病院数が多いため、一か所あたりでは配置数が相対的に少なくなり、人手がまばらとなってしまう特徴があります。加えて、フリーアクセス制度(国民が施設や診療科、日時を問わず自由に診療を受ける。)もある為、現場のスタッフたちの業務量増加に繋がっています。

 また、今後は少子高齢化の影響によって人口や働き手は減少する見通しです。反対に高齢化、特に要介護率の高くなる75歳以上人口の増加に伴った医療と介護ニーズの増加が予想されます※2。これらの課題に対しては、健康寿命の延伸によって医療・介護の手を借りずに長く元気に過ごせる時間を長くし、現場で働く医療や介護人材についても生涯現役を目標にした定年の延長や、負担の少ない働き方への改革が始まっています※3。こういった諸課題においてはテクノロジーによるサポートに高い注目が向けられており、工学分野や各メーカーも技術を活かして、社会への支援や貢献する様々な事業、製品開発を医療・介護現場と協力して進めていっています。

  1. 1)OECD Health Statistics 2014 から
  2. 2)中医協(2016) 医療と介護を取り巻く現状と課題等
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000167844.pdf
  3. 3)人づくり革命 基本構想 (2018)人生 100 年時代構想会議
    https://www.kantei.go.jp/jp/content/000023186.pdf
  4. 3-補足)
    厚生省(2007)少子・高齢社会における福祉人材確保
    https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2007pdf/20071026011.pdf

4. 医療費、介護保険の予測

医療費、介護保険の予測イメージ図

 75歳以上の高齢者は複数の病気や生活課題を抱えるリスクが上がるため、医療や介護保険によるサービスのサポートを受ける割合が高くなる傾向があります※1。そして、人口ボリュームが多い団塊世代が2025年には75歳以上となります。これを受けて2015年は医療費約40兆円/介護費約10兆円だった社会保障費が、前述に伴って2025年にはそれぞれ60兆円と15兆円程度に増加する見通しの仮説がたてられています。これは、それぞれ2015年と比較して1.5倍近い増加率です。

 社会保障費増加について現在までは経済成長によるGDP増加や消費時税率の増税で対応し、足りない分は国債の発行で補ってきています。しかし、今後は支出の増加を抑えることや、少ないマンパワーで社会を支える仕組みづくりが試されています。私たちは強みを活かしたSDGs(社会と当社の持続可能な成長と価値向上)※2についてグループ全体でさまざまな取り組みを行っています。

 高齢者人口の長期予測としては2040年までは高齢者の増加がまだまだ続いていきます。そのため社会保障費が増加していくのですが、そこに加えて2040年に関してはさらに支え手が減る可能性が人口動態から示唆されます。そうならないために今から準備をしていくことが急務であり、ロボットやテクノロジーを活かしたツールの開発・推進については社会的に意義のある未来への投資であると私たちは考えます。

  1. 1)H25介護保険制度を取り巻く状況等
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000018735.pdf
  2. 2)安川電機(2019)長期経営計画「2025年ビジョン」(2016~2025年度)
    https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/Vision2025_Revision.pdf

5. リハ業界を取り巻く技術進歩の歴史

リハ業界を取り巻く技術進歩の歴史イメージ図

 リハビリテーション分野は、古代ギリシャ時代には太陽や水、熱の力を使った物理療法の原型があったと言われています。日本においては1940年代ごろから学術や概念として発展していき、初期は徒手以外では水治療法や温熱の物理療法、道具としては肋木や平行棒、義肢などが用いられました。その後は、人員の充実と提供方法の拡大が中心だったのですが、近年のEBM(Evidence-based Medicine…データに基づいた最善の医療)の推進で変化が訪れます。特に、脳卒中麻痺者では早期からの介入や、専用の装具の使用により定量的な負荷を与える流れが起きました。重度者に対する早期の支援や多様なニーズを支える過程でリハ機器も大型化し、さらにロボットが近年見られるようになったのです。リハビリテーションがテクノロジーと共に進化が進み、国もさらなる推進を続けています。その結果、2020年の診療報酬改訂では“運動量増加機器加算”※1として当社の製品も含めて多くのリハビリロボットが加算算定の対象機器となりました。

 「AIやロボットによって仕事が無くなる。」が世間の話題にありますが、リハビリテーション分野はその中ではなくなる可能性の少ない職種と言われています。そのため、私たちは人びとのQOLを支援するためにロボットなどテクノロジーと専門職や現場がどう協力できるか?を一緒に考えていきたいと思っています。

 かつて、産業革命の際のラッダイト運動などがありましたが、そのような歴史を経て生産性の向上があり、より豊かな生活が現在は可能になっています。リハビリロボットについてもセラピストや患者さまの強いサポートになる力を秘めていますので課題解決の道を一緒に歩んでみませんか?

  1. 1)医療機器の保険適用について
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000616253.pdf
  2. ラッダイト運動…産業革命の際、仕事が無くなることに危機感を覚えた労働者が機械を壊して回った運動。

6. 日本の医療リソースのビジョン

日本の医療リソースのビジョンイメージ図

 現在の医療リソースのためのロボット利用の一例として産業用ロボットの技術を応用した医療ロボットを医療現場で活用する場面が増えています。

 日本の中で、診療報酬による加算項目など評価が高くなってきているのが、リハビリ現場でのロボットです。これらは診療や介助のために医療者が使用するタイプと、障害を抱えた方が身体や生活機能をサポートするためにご自身で着用や使用するものに分類されます。現在はまだまだごく一部の使用に留まっていますが、いずれはCPMやエルゴメーター、車椅子のように各施設にロボットが導入され、リハビリ現場の姿が変わる可能性を秘めています。

 今後の流れとしては、5G回線の普及によるloTやAIの発展などが追い風になるのではないでしょうか。政府としてもロボット新戦略(2014)を掲げ、その中で『少子高齢化や老朽インフラ等、ロボットが期待される「課題先進国」』と述べました※1。また、産業用ロボットの分野では世界中の同ロボットの3分の2が日本で生産されており、3分の1は国内で稼働しています。かねてよりのロボット産業の強みと、政府の後押しの流れもあって市場規模は250億円(2015年)から2000億円(2025年)と拡大傾向と調査データが挙げられており※2、さらに現場に普及して医療・介護の現場にとって日常的なものになっていくことが予想されます。

  1. 1)首相官邸:ロボット新戦略のポイント
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/robot/pdf/senryaku_point.pdf
  2. 2)NEDO: 2035年に向けたロボット産業の将来市場予測
    https://www.nedo.go.jp/content/100080673.pdf